葬儀の朝。
喪主は形式的に時坂がつとめ、本間がそれを補佐する事となった。純一は本当に親族の義務を放棄して、部屋にこもった。
豪華な棺。色とりどりの花に飾られている。前日に紀明の遺体はこの中に移されているが、損傷が激しいため献花やお別れはなし、土葬のみを行う事となっていた。珍しく今でも土葬の習慣があるのです、とは葬儀社の人間の弁。
朝一番に、式後の料理を手配するために阿沼が家を出た。ついで、葬儀社の藤岡が、簡易棺を処理するために退出。そののち、純一を呼んでも返事がなく、鍵もかかっているため諦めて、一同は葬儀に出発した。
葬儀は、それなりにしめやかに行われた。途中、喪主が急に変更された事に藤岡が文句を言ったが、時坂の「何かあったらわしがなんとかしますよ」という言に丸め込まれたようだった。石黒が体調不良で参列せず、阿沼も予想外の参列者数に、料理準備が遅れている、と藤岡が告げた。
式の後の会食では、阿沼が苦心して作った料理が振る舞われ、近隣住民を含む参列者は満足げであった。本間は終始、喪主補佐としての役割に躍起で、会食の頃には疲れきって葬儀社のライトバンの中で休んでいた。
絹子は終始、怪しい行動を取る人物探しに躍起で、阿沼や藤岡、時坂といった葬儀の主要スタッフは気が休まらなかった。
こうして、式は終わった。
誰もが、この事件から介抱されるかな、と考えていた。
誰もが、馬越純一の死体が見つかるとは、考えていなかった。
死体は二階の廊下に転がっており、やはり背中を開かれ、臓物が撒き散らされていた。
発見したのは、家で療養していた石黒家政婦。
錯乱のあまり、異様な事を口走った。
「旦那様をみました。血まみれになって、ふらふらと廊下を歩く旦那様を……」
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