クリスの悪夢 ★1
~クリスの自室~

夢を見た。

あの頃のショックだった夢を見た。

それは、私が初めてニートに裏切られたと知った時のであった。

その夢は、私にとっては悪夢であり、ニートの元恋人である由衣さんの存在を知った瞬間でもあった。

私は、枕元の近くの目覚まし時計を手に取り、現在の時間を見る。

現在の時刻は、深夜二時半。

明らかに、まだまだ眠れる時間だ。

仕方ない、今日は眠るとするか・・・

まだ、眠れる時間だしね・・・

私は、時計を元の場所に戻し、再び眠りにつく。

また、あの悪夢を見ない様にと祈りながら・・・

ここで、私の意識は途切れたのだった。

~クリスの夢の中~

紅葉『たまには、こういう組み合わせでお茶を飲むのも良いですね』

クリス『そうですね』

楓『そういえば、お兄ちゃん。遅いね』

紅葉『そうね』

クリス『そのまま、エロゲーでも買いに行ったんじゃないですか?』

楓『有り得ますね』

紅葉『ええ、有り得ます。この近くにも、ニートがよく行くエロゲーショップがありますからね』

楓『じゃあ、そこに行ったのかな?』

紅葉『でも、私達の買い物があるのに、そこへ行くかしらね?』

紅葉『いくらあいつでも、そこまではしないわよ』

楓『それもそうだね』

クリス『・・・』

何故か、私達は妙に納得してしまった。

確かに、この近くにもエロゲーを販売する某電気屋やエロゲーショップが存在する。

でも、エロゲーショップに行くくらいなら私達に電話の一本でも入れたり、買い物を済ませてから出かけたりすると思う。

ニート・・・

本当に、どこに行ったんだろう?

また、私を置いてどこかに行くの?

なんとしても、それだけは避けたい・・・

絶対に避けたい・・・

あれ?

なんか、急にバイブ音が・・・

私が、ニートの事を考えていると、ふと、私の携帯が鳴った。

私は、すぐにポケットから携帯を取り出し、発信者を確認する。

発信者は、私の付き人でヤリマンのフリアエだった。

はぁ・・・

出来れば、ニートが良かったな・・・

一体、何の用なのよ・・・もう・・・

私は、心の中でそう思いながら、フリアエが掛けてきた電話に出る。

しかし、このフリアエからの電話は私にとっては意外な内容だった。

クリス『もしもし』

フリアエ『お嬢様、お疲れ様です。主治医のフリアエです』

フリアエ『今、お嬢様は、どちらにいらっしゃいますか?』

クリス『どこって、ニートの家だけど、それがどうかしたの?』

フリアエ『あらあら・・・ニートさんはお自宅にはおらず、ニートさんは外出しているのにですか?』

フリアエ『また、健気で可愛らしい彼女さんですね』

クリス『・・・』

フリアエ『お嬢様。どうか、なさいましたか?』

クリス『何で、それを知ってるのよ?・・・』

クリス『貴方、今日は私と来てない癖に・・・』

私はフリアエの言動に苛立ちながら、フリアエにこの疑問を投げ掛ける。

すると、フリアエは笑いながら私にこう言った。

まるで、私をあざ笑うかの様に・・・

フリアエ『うふふっ、それはですね・・・』

フリアエ『ついさっき、女連れのニートさんを見掛けたからですよ・・・』

フリアエ『しかも、かなりの美人でしたよ・・・』

クリス『ど、どこで!?・・・』

フリアエ『!?』

嫌な予感がした。

まさか、フリアエがまたニートを?

有り得る・・・

あのフリアエなら有り得る・・・

なんたって、私の目の前で平然と浮気をした人物だからね・・・

だが、私のこの予想とは大きく外れ、ニートの意外な人物との接点が浮かび上がった。

それは――

クリス『フリアエ。今、ニートはどこにいるの?・・・』

クリス『早く、答えなさいよ・・・』

フリアエ『お嬢様。落ち着いて下さい』

フリアエ『今、ニートさんはの自宅近くの喫茶店にいらっしゃいます』

フリアエ『今も二人仲良く、店内で二人でドリンクを飲みながら、昔の思い出話をされていますよ』

フリアエ『私が見た所、ニートさんの元彼女さんみたいですね』

フリアエ『なんだか、二人の仲を壊すのがもったいないくらいですわ・・・』

クリス『・・・』

フリアエ『お嬢様?』

なんだ、ニートの元彼女さんか・・・

なら、少しは安心かな・・・

良かった。フリアエじゃなくて・・・

ん?

ニートの元彼女?

ニートって、私以外にも彼女がいたんだ・・・

私が言うのはなんだけど、ニートのどこが良かったんだろう?

ただ、毎日の様にエロゲーをしているだけなのに・・・

でも、なんか気になるな・・・

一回、様子を見に行くか・・・

うん。そうだね。

そうしよう。

フリアエ『お嬢様、お嬢様?』

クリス『え?・・・あ、ごめん・・・』

クリス『今から、そっちに行くから待ってて・・・』

クリス『確実に、ニートを私の手で仕留めてあげるから・・・』

クリス『ぐさっ、ぐさってね・・・』

クリス『うふふふっ・・・』

フリアエ『か、かしこまりました・・・』

フリアエ『それでは、店外にてお嬢様のお待ちしております・・・』

クリス『そう。分かったわ』

クリス『それじゃあね・・・』

ガチャッ――

ツーッ、ツーッ・・・

バキッ――

バチバチッ――

ドクドクッ――

プシュ――ッ・・・

クリス『・・・』

楓『・・・』

紅葉『・・・』

私は笑顔でフリアエにそう言うと、フリアエとの通話が終える。

そして、同時に自分が右手に持っていた携帯を無意識の内に素手で粉砕したのだった。

あれ?

なんか、血が出てきたな・・・

でも、あまり痛みは感じない・・・

何でだろう?・・・

おまけに、私の衣服や私の携帯は、既に私の血でベトベトだし、更には、楓さん達が呆然と私の様子を見つめている。

私、何か二人を驚かす様な事したのかな?

いや、何もしていない。

確実にしていない。

私は、ちょっと、ニートの事でムカついたら自分の携帯を破壊しただけ・・・

ただそれだけ。

なのに、どうして?

これが、異文化コミュニケーションって奴なのかな?

多分、そうなんだね・・・

うん。そうなんだね。

私は自分の中で一通り自己完結をすると、紅葉さん達の目の前で、自分の掌から流れ出る血を止血する。

その後、私の衣服や私の携帯に付着した血の後を消し、更には、掌の傷や私の血で汚れた部分を元通りに修復し終えると、私は自分の分の紅茶を一口飲んだ。

クリス『ふぅ・・・』

楓『・・・』

紅葉『・・・』

クリス『あれ? どうかしたんですか?』

クリス『何か、あったのですか?』

私は、さっきから私の顔を呆然と見つめる二人に、笑顔で話しかける。

すると、二人は恐る恐る私に話しかけてきた。

なんと言うか、今の二人からは、私に対する強い脅えや恐怖が感じられた。

紅葉『い、いえ・・・そんな事ないですよ・・・』

紅葉『ね、ねえ、楓・・・』

楓『うん。そうだね・・・』

楓『ただ、クリスさんって、力強いんですね・・・』

楓『私、てっきり、かなりか弱い人だと思ってました・・・』

紅葉『わ、私もです・・・』

クリス『いえいえ、そんな事ないですよ』

クリス『私、そんなに力強くありませんし』

紅葉『・・・』

楓『・・・』

この瞬間、私のこの言葉を聞いた二人は、呆然と私の顔を見つめてくる。

しかも、かなり信じられなさそうな顔をしていた。

やっぱり、私のやり方に無理があったかのな?

思えば、ニートにも今目の前にいる二人みたいな顔をされたな・・・

やっぱり、日本と外国の文化の差って凄いな・・・

どうしたら、日本人が違和感を持たないような振る舞いが出来るんだろう?

う~ん・・・分かんないなぁ・・・

まぁ、良いか・・・

今は、ニートの帰りを待とう・・・

うん。そうしよう。

私は、心の中でそう一人で呟きながら、再び紅茶を飲む。

すると、またしても楓さんが、恐る恐る私に話しかけてきた。

今回は、かなりストレートな問掛けだった。

楓『あの・・・クリスさん・・・』

楓『少し、よろしいでしょうか?』

クリス『良いですよ』

楓『束の事をお聞きしますが、先程のお電話は、一体どなただったんですか?・・・』

楓『かなり、取り乱してたみたいですが・・・』

クリス『ああ、さっきの電話の事ですか?』

クリス『それは、私の付き人からの電話ですよ』

クリス『さっき、偶々、ニートをこの近くで見掛けたから、私に知らせてくれたみたいなんです』

クリス『どうやら、まだニートは買い物の途中みたいですね』

楓『そ、そうですか・・・』

紅葉『つ、付き人!?・・・』

なんか、紅葉さんが付き人と言う単語に反応した。

そんなに、私に付き人がいるのがおかしいのかな?

私、自慢じゃないけどこれでもとある良家のお嬢様で、それなりに良い暮らしをしている。

やっぱり、日本と外国との文化の差って凄いな・・・

生活面でも、色々出てくるみたいだし・・・

なんか、話辛いな・・・

私、今日はもう帰ろうかしら?・・・

あ・・・

思えば、フリアエを待たせてたんだった・・・

どうしよう?

もう、いっその事、フリアエの元に行こうかな?

私が行かなきゃ、フリアエが可愛そうだし・・・

一応、この二人にも誘ってみよう・・・

何か、気分転換にもなると思うし・・・

私は、そう心の中で思いながら、二人にある誘いを掛けてみる。

すると、二人は意外そうな顔をし、私に向けて何かを目で訴え掛けていた。

私は、今の二人の気持が分からず、さっきから何が言いたいのかを聞いてみる。

そして、二人は恐る恐る私に向かってこう答えた。

クリス『お二人も一緒にニートの元に向かいませんか?』

クリス『もし、私と一緒に向かわれるのなら、楓さん達も一緒に私の付き人に車で送らせますよ』

楓『いえ、結構です・・・』

楓『わざわざ、私達の為に申し訳ないです・・・』

紅葉『そ、そうですよ・・・』

紅葉『まだ、私達は死にたくないもんで・・・』

クリス『・・・』

なんか、二人が私の発言を誤解したのか、かなり悪い方に勘違いをしている。

私、ニートの事を殺すつもりもなければ、二人の事も殺すつもりもない。

ましてや、ニート達を殺す価値もなければ、殺す意味もない。

もしかして、また失敗した?

また、二人に誤解させる様な事をしたのかな?

ああ・・・

お願いだから、そんな目で見ないでよ・・・

なんか、調子狂うし・・・

私まで悲しくなってくるし・・・

ううっ・・・一体、どうすれば・・・

あれ?

そんな時、私の元に一匹の猫が現れる。

その猫は、私の座るソファーに座ると、私に向かってこう言った。

プリムラ『マスター。少し、よろしいでしょうか?』

プリムラ『ニートさんの件で、お話があります』

プリムラ『しかも、かなり重要な事です』

クリス『分かったわ。今すぐ、私に話してくれるかしら?』

プリムラ『かしこまりした』

私は、突然やってきた猫の姿をしたプリムラに、私は平然と話しかける。

すると、プリムラの事が珍しいのか、またしても紅葉さん達が呆然としていた。

更には、今にも信じられなさそうに、何かを呟いている。

しかも、全て今目の前にいるプリムラの事であった。

紅葉『ね、猫がしゃべった・・・しゃべった・・・』

紅葉『しかも、英語・・・英語・・・』

楓『うわわっ・・・!?』

クリス『・・・』

プリムラ『・・・』

私の予想通り、目の前にいる二人が、プリムラの今の言動に驚愕している。

ああ・・・そうか・・・

いつもの癖で、猫の姿でプリムラと英語で会話しちゃった・・・

ここでは、外国の常識は通じないんだった・・・

本当に、ややこしいなぁ・・・

仕方ない・・・

プリムラを人間に戻させるか・・・

私は、プリムラにすぐに人間の姿に戻し、二人に分かるように話させる事にする。

すると、プリムラもこの私の提案に賛成し、プリムラは変身を解除した。

そして、人間に戻るやいなや、プリムラが思わず溜め息を吐く。

このプリムラの様子を見て、私もプリムラと同じ事を考えていた。

それは――

プリムラ『マスター。異文化コミュニケーションって大変ですね・・・』

プリムラ『私、ここまで苦労したのは産まれて初めてです・・・』

クリス『私もそう思うわ・・・』

クリス『でも、仕方ないの・・・』

クリス『ここでは、私達の祖国での常識は、一切、通じないからね・・・』

プリムラ『・・・』

私は、人間の姿に戻ったプリムラを優しく抱き締め、プリムラの頭を優しく撫でる。

すると、プリムラは全く抵抗する事なく、私にされるがままとなっていた。

その後、私とプリムラは、お互いに同じ事を思い、同じ境遇になった事で改めてお互いの絆を深め合う。

そして、紅葉さん達を交えてのプリムラによる説明がはじまったのだった。

~クリスの夢終了~

ジジジジジジジジッ・・・

ジジジジジジジジッ・・・

パチッ・・・

クリス『・・・』

クリス『夢?・・・』

また、あの夢を見た。

あの日の夢・・・

何者かが、リセットボタンを押した日の夢・・・

ニートが消えて、私が紅葉さん達と一緒にニートの帰りを待っている時の夢・・・

まさか、一日に同じ夢を二回も見るとは・・・

これは、何かのお告げなのかしら?

だとしたら、かなり、興味深いわね・・・

でも・・・

あの時のニートは、私ですら見付けれなかった・・・

私達が気が付いた時には、既にニートの姿はなく、完全にニートは失踪した。

そして、何者かがリセットボタンを押し、私達の住む世界をリセットした。

まるで、私の野望を防ぐ様に・・・

はぁ・・・

今は、悩んでても仕方ないか・・・

さて、今日もニートの元に行くとしようかしら。

確実に、ニートは自宅にいる。

そして、確実にゲームをしている。

うふふっ・・・

何だか、ニートに会うのが楽しみになってきたな・・・

待っててね、ニート。

私は、今日もニートに会いに行くから。

その後、私はリビングに向かい、フリアエ達と共に朝食を取るのだった。

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