「そうかそうか!ぶじでよかった!」
ぱんぱんと痛いくらいに俺の背中を叩くのは、氷の妖精ことチルノ。
小町は昼食の準備とか言って厨房に行ってしまって、いまここにはいない。
チルノとは、前に泉で出会って握手し損ねたのまでは覚えてる。
思い出そうとすると頭の奥が引っ張られてるかのように痛くなる。
正直言うと、小町の名前はすんなりと出てくるのだが、ほかの事を思い出そうとするとさっきみたいな頭痛みたいな痛みが走る。
何かを思い出そうとすると頭が痛くなる。過去にはそんな経験がなかったのに。
過去に?
過去?
カ…コ……?
ここに来る前は…確か…
来る…前…
「ひゅう!」
と、またしても前が暗くなりかけたところを、今度はこの妖精さんが助けてくれた。
「…んと、なんだい、チルノ。」
「ひゅう、またくらいかおしてた。」
暗い…顔?
はて、俺は一体いつ暗い顔をしたのだろう?
それに、チルノは「また」と言っていた。過去にも自分は暗い顔をしたということなのだろうか。
知らぬ間に俺は暗い顔をしていたのかもしれない。それは気を付けなければ。
「……ゴメン、ちょっと考え事をね。」
「かんがえこと?」
「ああ。」
「それって…」
ずいっと身体を寄せてくるチルノ。彼女の手足や吐息はさすがに氷の妖精と言ったところか。冷たい。
こんな彼女がどことなく悲しそうな顔をしながら、俺に問いかけるようにこう言ってきた。
「それって、ひゅうにとってつらいこと?」
正直、心にぐっときた。まさか、彼女からこんなことを言われるなんて。
彼女は見た目からして元気で活発な少女だと思っていたのだが、俺はそんな彼女に心配をかけた上にこんな悲しそうな顔をさせてしまっている。
「……辛いかどうか分からないな。」
「……。」
そのまま、彼女は下を俯いてしまう。さらに俺は落ち込ませてしまったのかとあたふたしかけたその時だった。
「あたいもね、かんがえごとするときあるんだ。」
チルノが口を開いた。
「あたいはさいきょーなんだよ?なのに、マリサやレームにかてないの。なんでだろうっていっつもおもうの。けどね!したをむいてたってかてっこないんだって!だんまくごっこのときもまえをしっかりみないとあたっちゃうからね!だからまっすぐみていこう、なやまないでまえだけはしっかりみようってきめてるんだ!」
次々と話してくるチルノがだんだんと明るくなってきている。それよりもいい話を聞いた。
前をしっかり見つめなきゃ、か…。
確かに、俺は前をしっかりと見つめてはなかった。
それどころか後ろにひきずり込まれかけていたのかもしれない。
何故過去を思い出せないのか。それは前をしっかり見てないからかもしれない。
誰がそう決めたのか分からないけど、そうと決まればそうするほかにない。
だって自分が決めたことには間違いなってないのだから。
チルノから貰った言葉に、俺は励ましを一緒に貰った。
やっぱりというか、彼女は元気を与えてくれる。
見ているだけで彼女から元気が貰えそうだ。
その彼女は立ち上がり、襖をバンと大きく開けると、振り返り
「あたい、いまなにかんがえてるとおもう?」
と、笑みをこぼしながらこう問いかけてきた。
「……なんだろう、楽しいこと?」
「えへへ、ないしょ!」
と、いたずらにあっかんべーをしながら吹き出しの廊下を走っていった。
「……そんな考え事もあるのか。」
彼女からは、いろいろと学べそうだ。
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Extra.8-1
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「………私の出る幕はなかったようですね。」
「まったく、刀もない半人前が言うセリフじゃないじゃないな。」
あたいと妖夢は、ひゅうのいる部屋の襖の裏に隠れていた。
チルノがいる襖とは反対の内廊下側の襖に、二人はコソコソと隠れながら二人の様子を見ている。
「ってか、半霊さんよ、昼食の用意をしてたんじゃないか?」
「平気です。今はちょうど煮詰めているところだから、数分間は見放しても大丈夫ですから。」
「そうかねぇ……。」
あたいは頬をポリポリをかきながら改めてひゅう達の様子を見つめている。
正直、チルノとひゅうは会わせたくなかったのだが、向こうから来てしまったらどうしようもない。一か八かであたいはその部屋を離れた。
二人で話し合うにはちょうどいい機会だとおもって。
とは言うものの、やはり心配になってしまう。改めてもらった拘束具を寝てる間にしたのだが、もし万が一の状況でその手枷の効力が発動してしまうとひゅうも逃げたいときも逃げられなくなってしまう。
だから後々不安になってこうしていると言うわけだ。
で、妖夢は妖夢で「なんだか黒い気配が」とか言って厨房を抜け出してひゅう達の様子を見に来てるし。
でも、なんだかチルノ達も無事に解決しそうだし、ここで改めて妖夢に注意をする。
「だから台所、見なくていいのか?」
「そんなに気になるなら貴方が見てくればいいのでは?」
「そうじゃなくて、ほら『食料』が」
「!!!まさか!」
そういうと、エプロンをぶら下げた妖夢はすぐさま厨房へと走っていった。
「うわわわ!幽々子様!なにをやってるんですか!」
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Extra.8-1 end
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Extra.8-2
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「まったく、あなたも暇ですね。」
「そうでもないわよ、私だってやることあるんですもの。」
「ではそちらを先に片付けてはいかがでしょう。」
「あらまぁ、ご親切に、ですがこちらを済ますことが先決ですわ。」
「だからって……」
「だからって貴方と将棋をしている暇ないんです!八雲紫!」
「まぁまぁ落ち着きなさいな。映姫。」
「落ち着いてられません!これ、そちのほう、紫の相手をしてやってくれ。」
「な、途中で投げ出すなんて貴方らしくないじゃない!白黒つける貴方がこんなことしていいのかしら?」
「ご心配なく、私の指示通り動かしてもらいますから。2五歩」
「……私も舐められたものね。」
「こちらにだってやることは山積みなんです。あ、3三銀成ってください。」
「…くそう。こんな銀取ってあげるわ。」
「はい、王手」
「………」
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Extra.8-2 end
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