罪人が幻想入り 14
寒気がしたので、再び布団に潜り込んだ。


寒い

寒い


身が震えるような寒さを感じた。

俺は布団を抱きしめた。強く、寒さから逃げるかのように。


目を強く瞑り、再び眠りに着くよう願いを込めて。



「おい、起きたのか?」



そして、俺は下からの声で眠りからも寒さからも覚めることができた。





―――――――――



「まったく、最近調子が悪そうだな。」



うるへー、貴様に何がわかる。と、顔に出しながら、朝食のパンにマーガリンを塗る。


「なんだよ、人の顔をじろじろ見て。パンがまずくなるだろう。」


「まぁそう言うな。」


にやにやと俺の顔を見やがる。何をたくらんでるんだか。



「で、だ。寝言の彼女は誰だい?」


もっふ。やばい、不意を衝かれた。これはまずい!


素早くコップの中の水を流し込む。パンに水が流れ込み、水と共に下に落ちていく。


「っぷはぁ!い、いきなり何言いやがる!」


思いっきり水をかけてやろうかと思うくらいに俺はてんぱってしまう。


「まぁ、落ち着け。なんでもないだろう、ヤナの口から出てきたんだからな。」


ニヤニヤと俺を見つめてやがる。じつに気持ちが悪い。


「し、知るかよ。なんつってたんだ、俺。」


再びパンを口にする。マーガリンの風味が口に広がる。



「ん~、私も覚えていないなぁ。」



人をからかっておいてなんだその惚けっぷりは、畜生。からかったまま放置か。


なんだか無性に悔しい気がしている。



「覚えていないとか、なんだよ。」


「悪いな、思い出したら後で言うよ。」



と、いつの間にか、栢山は食事を終えていた。


「さ、清掃に取り掛かろう。今日はなんだか気分がいい。」


何故だか上機嫌になっていやがる。じつにおもしろくない。



「ちょっと持てよ、俺も一緒に。」


「そういえば言ってなかったな。今日から清掃班が変わるんだぞ。」


っと、ここで新事実を知らされる。ぴらっと渡される紙には清掃班が大きく12組に分かれている。


俺は4班。栢山は9班となっている。そしてさらに付け加えると、今日4班はトイレ清掃になっている。


げー、と思いながらも、先に栢山は席を後にしてしまった。



――――――――――――
Extra.A
――――――――――――




「身体の状態は?」


ドアから入り、すぐさま白衣を身に纏う男は、すぐさまコンピュータに前に立つ。


その横には誰かのレントゲンが移っており、いかにも医療系統の部屋になっている。


コンピュータには何かの周波を表しているメーターがぐにぐにと動いている。



「心肺は安定。通常通りです。」


「睡眠状態は。」


カルテを受け取ると、メガネをつけて目を近づけるように内容を見始める。


「……ん、一時不安定の周波を記録しているな…このときの映像と、状況を詳しく説明されている記録はないか?」


現場は少々慌しくなる。記録を持つものはコンピュータのキーボードをカタカタと高速に打ち込んでいる。


「4時32分、不審な周波が出ています。ちょうどレム睡眠からノンレム睡眠に切り替わろうとしているときです。」


映像で映し出されているのは、とある部屋の一部、ちょうど見えるのは二段ベッドがあるくらいだ。


「む、そうか、そのときに寝言を発言していたのだな。」


画面をマジマジと見つめだす。やはり見えるのは二段ベッドのみ。


『………ごめ…ん…』



その画面から聞こえてきたのが、弱弱しく小さな声で聞こえた「ごめん」の一言。


これは一体何を意味するのだろうか?と、顎に手をあてながら考える。



「一体何のことでしょうか…」


「うむ、気になるところだが、これに関しての質問は彼に不審な波を与えてしまうかもしれない。ここはあえて慎重に行こう。」


先ほどの男はメガネをかけなおす。



「栢山院長!これを!」



栢山と言われた男は、メガネをくいっとかけ直すと、メガネのレンズが光りの屈折で眼が見えないようになっていた。


「どうした?」


「先ほどの食事中です!波長が荒くなっています!」


「む?」



これは、先ほどのパン出来事だ。なにやらここにも同じような周波が見られたらしい。




「ふん……物が詰まって、意識が遠のいたのか?」


くくくと笑いを堪える栢山。


「違うんです、ここに。」



と、指を指したのは周波のモニタでなく、映像のほうのモニタだった。


「?これがどうした。」


「見てください。ここに…」



と、一時停止していた映像を再生しだす。



無音で再生されている映像でひゅうが立ち上がり苦しんでいる様子が見える。


と、そんな時、そのひゅうの左肩からなにやら黒い球体の物体が一瞬写っていた。



私は巻き戻しを要求する。


巻き戻して、問題の部分で一時停止をしてもらう。


そこには、球体の物がしっかりと写っていた。顔より遥かに小さいそれは、ひゅうの左肩の上を浮いていた。

実際、映像の乱れや、虫が通ったあとかもしれない。だが小さなソレは一瞬といっても0,4秒位写っていたのだ。


しかし、私は実際その現場に居合わせていた、むしろ目の前にいたのにもかかわらず、そんなことが起こっていたことにも気付かないとは…私もまだまだというわけだ。


「院長、どうします?」


そんなことに耽っている時間もなく、私はカルテを片手に、デスクの目の前に座った。



「それについてとことん調べてくれ。私も研究を再開する。」



カルテを置き、レポートを書き始める栢山。


総員5名が、静かに作業を始めた。


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匿名読者
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