外は涼しく、この寝巻きだと少々寒いくらいだった。
人里を少し離れると、辺りは森しかない。
道なりに進むと、たまに、野生の鳥が羽ばたくのが聞こえてくる。
そろそろ、鳥達の起床の時間かもしれない。いや、もう遅いくらいかな?
などと気楽に散歩しているときのことだった。
俺は今、一人で何もできない状況におかれている事に気付く。
見知らぬ土地で、俺はのんきに散歩というなんとも無鉄砲な行動をしている。
あの時、チルノの時は近くに小町がいたからよかったものの、今度は回りに誰もいない。
もし、あのときのように俺が立ちくらみで倒れてしまったら、誰も助けてくれないかもしれない。
俺は少々恐くなり、人里に戻ろうとした。
「あら、やっぱり早起きはしてみるものねぇ。」
戻ろうとしたときだった。
背筋が凍り、後ろに何者かがいることに気付いたのは。
「ねぇねぇあなた。ちょっと私に付き合ってくれないかしら?」
恐る恐る首だけ動かすと、俺の後ろには、あのチルノと同様に、人が浮いていた。
―――――――――
はぁ……はぁ……。
俺は逃げてしまった。
それはそうだ、あんなにも不可思議な現象を目の前にして正常でいられるヤツがいるものか。
俺は必死に逃げた。
今は小町がいない。俺は今、ただ一人の彷徨う生霊に過ぎない。
そんな俺が見知らぬ土地で何をされるかわかったもんじゃない。下手したらやられる。
もう、考える余地なく、俺は走って逃げることにした。
そして、俺の息が上がる頃、速度を緩め、辺りを見回す。
どうやら、相手は追ってこなかったらしい。俺の荒れる息が少々邪魔をしているが、周りで森の中を歩くような音はしていないようだ。
俺は適当な木に寄りかかり、ついには腰を下ろしてしまった。
「な、なんなんだ、畜生。」
俺は一人で文句を言っている。心を落ち着かせようとしても、必死に走った後の心臓はなかなか落ち着いてくれない。
それにしても、奇怪な話だ。何で人が浮いてるんだ?俺は少なくともここに来て二人は見ている。
まぁ、一人は妖精らしいが、それにしても不思議すぎる。
と、そんなことを考えている暇はないはず、状況を確認してすぐに小町の所に行かなくては。
俺は荒れる息の中、周りをきょろきょろと見回す。
どうやら俺は森の深いところに来てしまったようだ。本当に木で覆われているようだ。周りを見ても木しか見えない。冷静に考えるとよくこんなところを必死で駆けてきたもんだ。
「……っ…やっべぇな、これじゃ完全に迷子だ。」
取り合えず、明るいほうへ進むのが定義だ(思い込み)と、多少明るいところに進もうとした時だった。
「あらぁ、こんなところにいたの?」
一瞬しか見てなかったが、鮮明に覚えている顔が、俺の休んでいた木の横から現れてきやがった。
「―――!!」
俺は言葉にすることができなかった。
「案外遠くに逃げたものね、ここだと迷子になっちゃうわ。」
その人物は扇で口を隠しながら笑っている。それに、汗一つもかいてない。どんな速度でここまできたんだ。
俺はあまりにも仰天しすぎて、腰がうまく起こせなかった。
目の前の人物?(まだ浮いてるけど)は女性で、見るからに和服と言える物を着ている。
特徴といえば、微かだが、自分から光っている気がした。
「ねぇ、貴方。何で逃げたか問わないわ。それよりも、私についてくる?それともここで迷子になってる?」
明らかに後者は逃げられないと暗示しているかのように聞こえた。
まさか、このような美人に限って人をとって食うような真似はしないだろう。
後は小町に頼るしかない。こうしてつかまった以上、自分では何もできないし、下手に刺激すると逆に危ないかもしれない。
俺は大人しく、ついていくことにした。あぁ、小町よ、せめて何か起こる前に助けに来てくれ。
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