罪人が幻想入り 8


俺達はあれから、辺りが明るくなるまで話をし続けていた。

まったく、今思うと我ながらすごいと思う、よく2時間近く話しられていたなと思う。


今、外を見るとそろそろ太陽が出てきそうな感じ。

俺は厠で用を足すと言い、茶の間を出た。

前も言ったが、ここの空気はホントに澄んでいて、涼しい空気を吸っていると眠気も覚めリフレッシュできるだろう。


と、俺が用を足し終え、お茶の間に向かうその間に、俺は洗面所で一度、顔を洗うことにした。


そういえば、辺りはなんだか古めかしい感じがしている。ここの厠も一昔前の和式だった。


洗面所らしき所もないので、仕方なく台所の水道を借りることに。失礼ながらも、手を洗う。


団子屋の店主は、綺麗好きなのだろう、台所がキチンと整理されてある。これも職人故にだろうか。でもまぁ、料理人としては常識の範囲なのだろうか。


と、手を洗い終えることもできたし、お茶の間に帰るとでもするかな。


お茶の間に近づくと、声どころか物音すらしない。俺は恐る恐る障子を開けると


「しー」

小町が自分の顔の前で人差し指を突き出し俺に向けて合図を送っていた。


俺は了解をしながら、障子を閉め、お茶の間に入らなかった。一度、俺が寝ていた部屋に戻り、毛布を持っていく。

再び入ると、小町はキョトンをこちらを見つめている。俺は静かに店主に毛布をかけてあげた。


かけ終えると同時に、小町が微笑みながら、「やるねぇ。」と俺に言ってきた。


俺は栢山のようにかっこいいことはいえなくて、「風邪ひいちゃうからね。」と、普通に返した。


「あ、そうだ、ちょっと気になることがあるんだ。ちょっといいかな?」


俺は寝覚めて、三人で楽しく話している最中に気になることがたくさん出てきた。

けどそれは、団子屋の店主には理解しがたいことであって、小町と話し合いがしたかった。


「そうだね、ここじゃ何だから、外に行かないか?」


そうして、俺は小町と一緒に吹き抜けの廊下で腰を下ろした。 



―――――――――



俺はまず、どうしてこうなったのかを詳しく聞くことにした。



「あ、あぁ、まだちゃんと話していなかったね…。」


小町は気付くと同時に下を向き、あまり切り出せない素振りを見せた。


「あい、わかった。ちゃんと話すよ。」


それから、俺はチルノに撃たれたのを知らされた。何でも、チルノも気が動転していたみたいで、間違って撃ったらしい。


「そもそも、何で俺が撃たれたのかな?」


「……あたいにも、原因はわからない。でもチルノは、一瞬だったけどものすごい寒気を感じたらしいんだ。こういっちゃなんだが、あのチルノがそう言うんだ。」


そんな、俺は何も考えずに彼女、チルノと握手をしたはずなのに。彼女は俺の何を見たのだろうか。でも、彼女もきっとなんだかわからないし、思い出したくもないに違いない。あまり問いただすのもよそう。


「それからなんだ、あたいはその後ひゅうをここに運んで寝かせた後に映姫様の使いの妖精から情報を聞いたのは。」


俺はどんなの、と聞いても小町は首を横に振るだけ、付け足すように小町はまた口を開く。


「とりあえず、己を見つける前に、己に潰されないように、とさ。」




俺は、一瞬何のことだかさっぱりわからないでいたが、すぐに思い出す。

しかし、それにはおかしな部分がひとつ残る。


「あれ、そういえば手枷は?」


俺は自分の手首を見つめる。やはり、目が覚める前まではつけていたはずの手枷がないことに気付く。


そう聞くと、小町はう~んと呟き、頬をぽりぽりかいている。


「あ~、アレね。………壊した。」


壊した?あれ、鍵穴がどうとか言っていなかったっけ……。


「ま、緊急事態だと思ったからね、思わずはずしちゃった。」


う、う~ん、それはそれでいいのだろうか……。ともかく、俺の腕は自由を取り戻せることができたみたいだ。


「あ、予備があるからそれ付けてね。つけないとあたいがまた怒られるから。」


俺の腕の自由は数時間で終わるみたいだ。 



――――――――――




「そうそう、俺、生き返れたよ。」



俺の口からふと漏れた言葉がこれだった。いや、事実なのは事実なのだが、はたから見てる人は何をいっているんだこいつは、になりかねない。


「あ、そう?なんともなかったかい?」


しかし、隣にいる彼女、小町はその内容を理解してくれることができる。


おそらく、店主の前でこんなことを話すと話がややこしくなってしまいそうだった。店主には悪いが、この話は小町と話させてもらうことにする。


「いや、なんともない…かな?そういえばここのことをよく思い出せなかったかな。」


ふむ、なるほどと呟く小町。


「覚えていない、か。おそらく、それは夢と同じ現象なのかな?ほら、夢ってなかなか思い出せないときってあるだろう?」


まぁたしかに小町の言い分は正解である。寝ていたときに見る夢は覚えていそうで覚えていない時がある。俺も、そんな感覚だった気がする。


「ん?そうするとひゅうは今は仮死状態なのかな?」


そう言われると、俺も〝元〟の俺の状態が気になる。


確かに、閻魔様、もとい映姫が死んではいないとは言ったものの、その彼女の口から生霊と言っていた。そうなると、本体である〝元〟の俺の身体は今はどうなっているのだろう。


「魂って、抜けても身体は自然に呼吸できるのかな……」


「さ、さぁ……」


微妙な相槌を返される。ますます不安になってしまう。



「ま、まぁ、最初が平気だったんだから大丈夫だよ、きっと。」


いまいちな反応。でも確かに、昨日は普通に動けていたから大丈夫だと思う。小町の言葉を信じよう。




――――――――――



俺は、小町の様子も知らずにずっと話しかけていた。気が付くと、小町はうとうとしている。


「……小町?」

「ひゃい、何?」


明らかに寝ぼけている。


もう、朝日が頭を出しているというのに気付かない俺が馬鹿だった。


彼女達は、俺のことを寝ずに看病してくれたんだ。当然眠いに決まっている。


俺は、寝てしまった彼女を抱えると、俺が寝ていた場所まで運び、そこに寝かせてあげた。毛布も、襖の奥から取り出し、かけてやった。



俺はというと、まだ全然眠くないので、こっそりと人里付近の森を歩くことにしよう。


今日はいい天気になりそうだ。きっと、楽しいに違いない。

俺は、静かに借りた寝巻きのまま外に出た。 


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匿名読者
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