俺はすぐに眠りに着くことができた。
特に疲れていたわけでもなく、ただ簡単に瞼を閉じただけだった。
それも一瞬。目が覚めたと思ったら、知らない床の間に寝させられていた。
俺はむくりと上半身だけ起こす。身体はたっぷり寝たような感覚で、いまいち反応が鈍い。俺としてはまだ一睡もしてないのだが、ちゃんと睡眠はしてあるようだ。感覚だけが起きていて身体が起きていないと言ったところだろう、あまり実感が湧かないが。
よく見ると俺は着替えさせられている。服の生地としてはさらりとした触感で軽いような気がする。
そして、もっとよく見ると俺はなぜか腹部を包帯で巻かれていた。
「これは……」
「気が付いたみたいだねぇ。」
思わず振り向くとそこにはある女性ががキセルを銜えながら、襖に寄りかかっていた。
「貴方は……」
「吃驚したよ。あんた、いきなり倒れたらしいな。」
フー、と煙を吐くとコンコンとキセルの炭を掃う。
「何でも、小さな妖精に脅かされたんだってね。不運なこった」
俺はよく思い出せないでぼーっと呆けてる中、一人、彼女の名前を口から漏らす。
「……小野塚?」
「あ、小町?」
確認するように言い返す団子屋の店主。俺は頷きで返す。
「あぁ、小町ならあたしが『彼なら平気だよ』って言ったら安心したのか、すぐ寝ちゃったよ。」
そう、ですかと、俺はあんまりしっくりこないまま返事を返す。
「ほらほら、病人はさっさと寝る!小町を心配させたくなかったらとっとと寝るこったね。」
じゃ、私はまだ用事があるから、と離れに行ってしまった。
俺は仕方なく布団に潜り込むことに。
――――――――――
………眠れん。
自分としてはもっと寝たい気分なのだが、身体はもう十分に睡眠をとっている状態。そう簡単には俺を寝させてくれないようだ。
あのあと思い出したが、あの女性はお団子屋さんの店主さんだった。
店主と小町には悪いが、この家を少しだけ散歩することに。
―――こういった木造建築は歩くたびにぎしぎしと手作りの感触を味あわせてくれる。まさに、職人の心を感じることができる。
俺は好きだ――こういったのどかな風景はほんとに心を癒すのには最適だろう。廊下から眺められる庭と、外の風景は自然そのものを肌で感じることができそうな気がするくらい見事に綺麗にしてある。
もっとも、ここの家の持ち主、団子屋の店主のこだわりの一つなんだろうな。
そう思っていると、なにやら一つの部屋が明るくなっている。
この障子から漏れる明かりは蝋燭の物だろう。風こそないが、揺らぎ揺れているのはろうそくの証拠。
俺は、そんな気はなかったがちょっとその部屋に近づくことに。
「………で……に……」
「………か、した……」
「はは………な……か!」
声からして二人の女性。一人は先ほどの店主、そしてもう一人が小町。
だんだんと前の記憶を取り戻していく俺。いい感じだ。
これといって裏心はないのだが、俺は障子に耳を当てることに。
「違うんだよ、そしたらさー……」
「嘘付け、もし本当なら――」
途中から聞いていると何のことだかわからない。
だけど、二人の会話は、聞いているだけでも元気になれそう、そんな気がしてくる。
二人の会話は、とても楽しく、おもしろそうに話しているから。
「ま、二人だけじゃおもしろくないからねー。」
「そうだね、確かに二人より三人の方が楽しいぞ、きっと。」
二人そろって俺をご指名ですか。俺の行動は見透かされていたらしい。なんか恥ずかしくなってきた。
「いや、まさかばれているとはね。」
「ばれるって、普通。」
「てか、ゆっくり休んでろって言ったろ。」
俺は店主に腰を軽く叩かれる。ツッコミにしては最適な痛さだった。
俺はスイマセンとヘコヘコしながら腰を下ろす。
俺は鮮明に思い出す。目の前にいる人が小野塚小町。ここ、幻想郷で最初に出会った少女。
「んー?なんか付いてる?」
俺が小町を見続けていると小町は自分の顔を確認しだす。すぐに俺は見とれてただけと一言。
「そっか。しかしまーいきなり倒れるなんて思わなかったからさ。あたいも吃驚しちゃったよ。」
小町は言い終えると目の前の湯飲みを口にする。店主がこっそり俺の手前に置いてくれたのはおそらく小町が飲んでいるのと同じお茶だろう。
「ほんと、ゴメンね。」
いいっていいって、と手をひらひらさせる小町。
「おまえさんはまだここ幻想郷に来て日が浅いんだ。慣れないこともあると思うからさ、遠慮なくあたいや他の人に聞いたり頼むといいよ。」
隣の店主も、「ここ付近の人たちはみんな優しいからね、気軽に話しかけな。」と、なんとも心強いお言葉を。
「うん…俺も、早く慣れるように頑張るよ。」
すると、その言葉を待ってたかのように、店主は、見えないところから団子を取り出してきて。
「じゃ、まずここに慣れるために、お話し合いでもしますか。」
と、二人の目の前においしそうな団子を置いてくれた。
もう、これを出されちゃ寝られないよ、と言わんばかりに小町は早速団子を一口食べている。
これは長い夜になりそうかな、と勝手に決め付ける俺。そう思いながらも俺も団子を一口食べる。
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Extra.4
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あたいは背筋が凍る思いをした。
目の前でさっきまで笑っていた彼が倒れていくのだから。
あたいは突然のことで何もすることも、声を出すこともできなかった。
そして、彼が倒れてから初めて声を出すことができた。
「――ち、チルノッ!なにやって――」
あたいが駆け出す前に、目の前にいるチルノが再び彼――ヒュウに襲い掛かろうとしていた。
思わずあたいは弾幕を放とうとした。その時、あたいの中で彼、ヒュウの笑顔を思い出してしまう
〝これを放つと彼にも当たってしまう……!〟
あたいはぐっと堪えたまま、チルノを止めようとした。
「よせ、チ―――!」
ほんとに夢中だった。彼を助けるため、必死に全速力で彼の下へと向かっていた。
だが、今手元に武器はない。あたいの愛用の鎌は先ほどの木陰の下にある。
弾幕を放てない以上、武器に頼るしかないのだが、あたいは素手で向かっていった。
だが、一足遅く、チルノが彼の下へと着いてしまう。一か八か攻撃を試みようと構えたが、チルノは
「だいじょうぶ!?」
と、彼の状態を確認していた。
―――――――――
話を聞くと、あの時、手を握った時、チルノは思いもよらぬ殺気を感じたらしい。
どうも、本人がよくわからないと言っているが、そのような感じをしたといっている。
彼はそのまま気絶してしまい、意識を失っていた。
あたいはその彼を急いで近くの団子屋に寝かせてもらうことにした。
気を失っているとはいえ、ちゃんとしたところに寝かせるべきだと思い、近くの団子屋の店主の家に置かせてもらうことになった。
「………」
今彼は、別室で横になっているようだ。団子屋の店主が簡単に手当てをしてくれたようだが、あたいはそれから彼の様子を見ていない。
団子屋の店主は「別段気にすることではない、気になるのもわかるが、少しは落ち着け。」と言ったきり、この茶の間に顔を出さない。
付きっ切りで様子を見てくれているのだろうか。
あたいは、店主の自宅に着いてから、妖精を通じて映姫様か報告を受けた。
何でも、彼、ひゅうには当分目をつけとくように、八雲紫が目をつけている。との報告を受けた。
詳しい内容を聞いてはないが、ともかく、ひゅうが何らかの力を持っているのに違いなさそうだ。
けど、あたいってそういったものの区別は得意なはずなんだけどなー
実際、あたいが触れても何にも感じなかったし、チルノだってあの後なんともなく触れてたし。
よくわからないけど、なんとなく自分が嫌になった。
何で早く気付いてやれなかったのだろう。早くわかればこんなことにならなかったのに……
落ち込んでいると、足音が聞こえてきた。
―――――――――
「本当ですか!?」
「あぁ、嘘でもなんでもない。彼が目覚めたよ。」
店主はキセルを吸いながら茶の間に入ってくると、笑顔で彼の無事を言い伝えた。
私は、心の底から喜んだ。本当に何もなくてよかったと。
思わず涙が出そうだった。
「あれぇ~、泣いてるのかい?」
店主がこんなこと言ってきたから、出そうな涙も出なくなった
店主は今は無理を言いつけて寝かせているが、多分起きてくるだろうと、予想している。
あたいもそれには同感。なんせ彼は六時間くらい眠っているのだから。
「まぁ、それまで語り合おう。最近、話のネタがなくて困っていたところだ。さ、小町のおもしろい話を聞こうとするかねぇ。」
時刻はもうすぐ三時を回る。これから先が長そうだと、心の中で囁く。
当然、数分後に、彼も混ざったのは言うまでもなかった。
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Extra.4 End
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「始まるわ。彼の内なる心が露になるとき、その時が彼の不幸の始まりであり、ここ幻想郷を闇に染める始まりでもある。どちらにしろ、このままではどちらも取り返しのつかないことになるわ。まったく不便なものね。彼の第一歩が不幸の始まりだなんて。」
「紫様、準備ができました。」
「さてと、夕食にしましょうか。」
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