「……え?」
俺は信じられなかった。いやむしろ意味がわからなかった
目の前にいる彼女は今まさに「あなたは死にましたよ」と宣言されたのだから。
「な、ななな……」
「まぁ、いきなりこんなこと言われても信じてもらえないんだけどさ。」
目の前の彼女は溜め息をはぁ、と吐き出す
「もう一度言うけど、ここは『三途の川』。おまえさんの知ってるとおりの場所さ。」
それは先程言われたが、もし、それが俺の知っている場所であるのならば、死者の沖ではなく、生前に戻れる沖を目指したいところ…だが。
「広いでしょ。おまえさんの想像してる場所はもっと山の方だね」
俺の心が読まれているのか。ともかく、彼女の言っていることは正しい。確かに無駄に広いし霧の所為で辺りがよく見えない。
「だから、あたいがおまえさんの道案内をすると言うわけだ。」
なるほど、理に適っている。だが、そうなるとやはり俺は死んでしまったのだろうか。
「っと、いい忘れた。今、おまえさんは死んだと思い込んでるね?」
その通り。そりゃあこんな所に来てしまったんだ、そう思うしかないだろう。
「ま、そう思うのも仕方ないよね。こんな所にいるんだから。だけど、おまえさんの場合。簡単に言えば死んでるけど死んでないって言ったところかな。」
「……?」
俺は首を傾げる。死んだようで死んでない…だと?
「あはは、まるで理解できてないようだね。ま、いいさ。とりあえず沖に着いたら詳しいことを話すよ。」
彼女は笑顔を見せ、道案内をしてくれるかと思ったらそのまま狭い船の中で横になってしまった。
────────────
「……あの、後どのくらい漕ぐのかな?」
俺はなぜかオールを渡され、船を漕ぐはめになっている。普通、案内人が漕ぐんじゃないのか?と、文句を言ってると彼女の背中にある大鎌で本当に死ぬことになるだろうな。
なんだか、笑顔でオールを渡された時も何だか寒気がしたような気もするし。
「ん〜、後10分くらいかなぁ。」
そんな彼女は小さな船の中でくつろぐように脚を組みながら寝ている。まったく、俺のスペースが無いじゃないか。第一、俺が寝そべってもやっと入るスペースを目の前の彼女は……
「それにしても、周りに何も見えないね。」
俺は、そんな文句を胸に秘め、気になる事を言った。十数分は軽く漕いでいるのに周りの霧は俺たちを包み、周りを見せてくれない。
「まぁね、ここはずっと霧がかかっているんだ。っと、そういえば自己紹介がまだだったね。」
彼女は思いついたかのようにすっと立ち上がる。
「あたいは小町。小野塚小町。まぁ気軽に小町と呼んでくれ。おまえさんは?」
中腰立ちになり、顔をずいっとこちらに寄せてきた。ち、近い。
「……北柳ひゅう。よろしく」
俺は思わず目を逸らしてしまった。こんな近くに顔を近付けられるとは思いもしなかったから
「ん、いい名前だ。ほいじゃ、ひゅうって呼ばせてもらうね」
小町といった女の子はにぱっと笑うと、再び横になる。
「あの……小野塚…さん…」
正直、女性と話すときに下の名前で呼ぶのに慣れいない。悪いくせで、何だか女性に失礼な気がしてならない。まぁ、勝手な思い込みなのだが。
「小町でいいってば。で、なんなのさ」
「ここ…川って言う割りには流れが止まってるみたいだよね…その、小野塚さんは方角とかわかるの?」
小町は名前でいいってって顔をしてる。俺は謝りながらもつい癖で、と返事を返す。
「ふーん、まぁいいや。方角なら大体わかるよ。それに、ここが大体どこら辺なのかって言うのもわかるよ。」
それはすごい。こんな霧に囲まれているのに場所までわかるなんて、さすがは案内人、名前は伊達じゃないもんだ。俺は素直に驚いた。
「ふふ、そして今、おまえさんが進んでいる方向は……」
お、それを教えてくれるとはありがたい。もし死者の沖の方角だったら引き返すことができる。
「ついてからのお楽しみってことで。」
そこで船から沖にぶつかる音がした。
────────────
俺は船を陸に上げると、力任せに船を引っ繰り返した。小町は俺の力に驚いたらしく、ぽかんとこちらを見ている。
というか手伝おうとしないのか。まぁ、女性にこんなことはさせられないが。
「何をしてるんだい?」
どうやら何をしているのかわからなかったらしい。
「まあ、俺もよく知らないけど、たしか陸に上げて逆さにして日光に当てるといいらしいんだ。」
小町はほぅ。と頷き、手を顎に当てている。当てながら俺にこう言ってきた
「まぁ、日光出てないんだけどね。」
ごもっともです。
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俺は小町に着いていくことに。俺たちは森のような所に入ると霧は少しづつ晴れていく。
「ここから何処に行くんでしょうか。」
俺はまたも同じ質問をしだす。もうそろそろ感に触る頃だろうと思っていると。小町からの返事が来た。
「ちょっとばかり閻魔様のところに。」
そうですか。
閻魔様ですか。
な、なんですとー!?
俺は逃げ出そうとすると俺のつなぎの襟を捕まれあえなく失敗。まーまーと言いながらずるずると引きずるかのように俺を引っ張っていく。
あぁ、最初に気付くべきだった。この鎌は死神を表しているということに。
そんなことを思っていると森を抜けることができた。と同時に俺は眩しさのあまり目を瞑ってしまった。
そこは、辺り一面に彼岸花が咲き乱れ、紫の桜が怪しく光っていた。
。
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