――何も考えられない。
今俺はおそらく仰向けになっているのだろうか。
青いはずの空も今では真紅のような赤に染まっている。
そしてそれが空なのかも確認しようがない。
――何も考えられない。
考えようとしても何もできない感じ。
しかし呆けているのとは違う。
思考が追いつかないわけでもない。
ふわりと心が浮く。
暖かい風に全身が包まれるような感じ。
気持ちが浮いてくる。だが身体は動こうとしない。
瞼が重くなる。眼を開こうとする力も残っていない。
完全に瞼を閉じた。暖かな空気は一瞬にして消え去ってしまった。
完全な闇。
何も見えはしない。
何も考えられない。
何も――できない。
何も―――。
これが『死』というものなのか。それすらも確認できない。
再び瞼を開けることができた。今度は周りが霞がかっている。
赤い空はぼやけた青色に。
そして目の前には人影が。
なにやら叫んでいる。
『―――、―――――。』
何を言っているのかさえも聞き取れない。
けど、俺はこの人を知っている。
知っているのに思い出せない。
思い出すことが、できない。
『――――、――――。』
必死に叫んでいるみたいだ。俺には全く聞こえない。
もう、何も、聞こえ、ない。
よく見るとその人の頬には雫が垂れていた。
泣いている。
泣いている。
『――――、――――。』
再び瞼が重くなる。
もう、開けないだろう。
ゆっくりと瞼を閉じる。
瞼を閉じていてもまだ外の明かりがわかる。
そして、ゆっくりとフェードアウトして行く。
黒へ、黒へと…。
再び完全な闇になった瞬間。瞼を閉じていてもわかるくらいの光が辺りを照らした。
ゆっくりと瞼を開くとそこは先ほどの場所ちがうということがはっきりと分かった。
。
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