【風邪が体調を崩す話】 ★4
風邪「今日は男さんとお鍋! 材料は買ったし……ふふ、楽しみ」


ヒュー


風邪「それにしても今日は……寒いなあ」







男「よし、準備オーケー。これであとは待つだけ……と」


男「…………(二人で鍋……)」


男「ぐあああ!! ヤバい……想像するだけで幸せすぎる! こんなに幸せ過ぎてすいません!」









風邪「(本当に寒い……)」


テク……テク……


風邪「(男さんのお家って……こんなに遠かったかしら……?)」








男「いやあ、二人で鍋を囲む事を考えると幸せで仕方ないなあ……」


男「もう3回くらい同じ事を考えたけど、全然飽きない……」


男「とはいえ、ちょっと遅いな……。時間には正確な人なのに……」

男「よし、ウダウダ悩む暇があったら探しに行くか!」








風邪「(体が……痛い……重い……)」


風邪「(これは……一体何なんだろう……)」


風邪「…………」


ペタン


風邪「(もう……歩けない……)」


風邪「(私の体……これから一体どうなっちゃうんだろう……)」


風邪「(怖い…………助けて……)」



風邪「男さんっ……」

男「大丈夫ですか!?」

風邪「……! どうしてここに……?」

男「なかなか来ないから荷物が重いのかなって……そうじゃなくて、どうしたんですか?」

風邪「自分でもよく分からないんですけど……急に………」

男「う~ん……とりあえず、調子が悪いんですね。分かりました……もうアパートはそこなんで背中貸しますよ」

風邪「え……?」

男「さ、どうぞ」

風邪「背中……?」

男「遠慮はいりませんよ」

風邪「(男さんが私を背負ってくれるの……? 駄目よ、そんなの申し訳ないわ……ああ、でも……)」

男「あの……、どうしたんですか?」

風邪「頭が……ぼんやりとして……」


フラッ……


男「おわっ! 大丈夫ですか!? もしもし!(気を失っている……。早く休ませてあげないと)」


男「失礼します……よいしょっと」


男「(軽いなあ……)」


風邪「う……ん……」


男「すぐに着きますからね」







風邪「……」


風邪「…………」


風邪「(あったかい……)」


風邪「(何だか……すごく安心する……)」


ギュッ……


男「あれ? 気付きましたか」

風邪「……。え、ええっ!?」


ガバッ!


男「ぎゃああ! 落ちます! 落ちますから!」

風邪「私ったら、いつの間に男さんの背中に……」

男「急に気を失ってしまったんで、勝手ながら背負わせて頂きました」

風邪「すいません……重かったでしょう?」

男「全然! 羽のように軽いですよ!」

風邪「ふふ……男さんたら。……あ、買ってきた材料が!」

男「大丈夫です。材料もちゃんと持ってますから」

風邪「男さん……力持ちですねえ」

男「あはは、まだまだ持てますよ。ところで、乗り心地はどうですか?」

風邪「悪い訳ありません。とても快適です」

男「そりゃ良かった」




男・風邪「……(もう少しこのままでいたいなあ……)」










男「よし着いたー。カギ開けるんで片手離しますね」

風邪「はい」


カチャカチャ……ガチャ


男「それじゃ、ここでおろしますね……よいしょっと。俺、休めるように布団をひいてくるんで待ってて下さい」

風邪「はい……」


バタバタ……


風邪「(寒い……。)」


風邪「(男さん……早く帰ってきて……)」





男「え~と、使ってない布団があったような……ええい、もういいや! 今は一刻も早く休ませてあげるのが大事だ!」


ドサドサ


男「え~と、あと枕が……」


ポスッ


男「ん……?(背中に何か……?)」

風邪「……」

男「うお! どどど、どうしたんですか!?」

風邪「……」

男「あ、あの……」

風邪「男さん……戻ってこないから……っ。私……不安で……」

男「……。すいません、すぐに戻らなくて。でも大丈夫ですよ、俺はいつでも駆けつけますから」
風邪「はい……」

男「さ、ちょうど布団の用意ができた所なんで休んで下さい」

風邪「よろしいんですか……?」

男「いやいや。こっちの方こそ、こんなボロい布団でよろしいんですか? って感じなんですけど。どうぞ気にしないで下さい」

風邪「……有難うございます」

男「ところで……体調が悪いのは見て分かるんですけど……風邪ですかね?」

風邪「体の奥が熱くて……節々が重い感じがあって……頭がぼんやりして……」

男「…………それ、風邪ですね」

風邪「…………え?」

男「風邪です」

風邪「…………え?」

男「風邪です」

風邪「え……えええ……?」

男「(驚く声も弱々しい……)」

風邪「(これが……風邪? こんなに苦しくて大変なのが風邪だなんて知らなかった……)」

男「……?」

風邪「(私……今まで何て事をしてきたんだろう……!)」

男「(よく分からないけど、ショックを受けてるみたいだ……)」

男「あの、自分が風邪だって気づいてなかったんですか?」

風邪「はい……。まさか、こんなに酷いのが風邪だなんて思わなかったんです」

男「(いつもより症状が酷いって事かな?)そうですか……。あ、何か食べたいものあります?」

風邪「よく……分かりません……。何を食べたらいいんでしょうか……」

男「う~ん、俺にも分からないなあ。ちょっと失礼しますね」

風邪「……」

風邪「(男さん向こうに行っちゃった……)」


風邪「(よく分からない、なんて返事をしたから怒っちゃったのかな……)」


風邪「……」


風邪「(男さんには嫌われてしまうし、体は辛いし。もう嫌……)」

男「はい、お待たせしました」

風邪「え……?」

男「とりあえず、色々持ってきてみました」

風邪「……」

男「飲み物と、フルーツゼリー、あとミカン。今、お粥も作ってますから」

風邪「男さん……」

男「他に食べたいものがありましたか? ひとっ走りして何でも買ってきますよ」

風邪「怒って……いないんですか……?」

男「怒る……? え、何でですか?」

風邪「男さんが親切に何が食べたいかって聞いてくれたのに、私は分からないって答えたから……」

男「え~、俺どんだけ心の狭い人間として認識されているんですか」

風邪「い、いえ違うんです。私が……」

男「体調が悪くて、頭もボーっとして、本当に自分が何を食べたらいいのか分からなかったんですよね?」

風邪「えっ? は、はい……」

男「その気持ち俺もよく分かりますから、怒ったりなんかしないですよ。むしろ、無理しないでくれて嬉しかったと言うか……」

風邪「……?」

男「と、とにかく……俺は怒ってないんですよ」

風邪「はあ……」

男「(……そうだ!)でも、勘違いされて少し傷付きましたから罰として……」

風邪「(罰……!)は、はい……」

男「俺の剥いたウサギリンゴの毒味をしてもらいます」

風邪「……え?」

男「結構上手くなったんですよ。あ、今食べたくなかったら別に無理はしなくても……」

風邪「男さん……それ、罰になってないです……」

男「そうかな。今あるリンゴは結構高い確率で蜜が混入されていたりして、危険なんですよ」

風邪「ふふっ……。蜜が危険なんですか……」

男「食べてみたら分かりますよ。毒味してくれます?」

風邪「ええ、喜んで」

男「よっしゃ! それじゃあ剥いてきますね。あ…………すいません、風邪をひいてるのにうるさくしてしまって」

風邪「大丈夫ですよ」

男「ちょっと熱みてもいいですか? 体温計ないんで、おでこになるんですけど」

風邪「お願いします」

男「それじゃあ失礼して……」


ペタッ


男「あ、さっきまで水触ってたから俺の手冷たくないですか?」

風邪「大丈夫です」

男「う~ん……。やっぱり熱が少しありますね。すいません、これからは静かにするようにします」

風邪「どうぞお気になさらずに。それよりも私……」

男「?」

風邪「おでこを付けて熱を見てくれるんだと思ってました。それしか知らなかったので……。ふふ、まだまだ知らない事だらけですね」

男「(ー!)そ、そそそそうですか……。俺、リンゴ剥いてきますね」

風邪「待ってます」





男「(うわああああ! 俺のバカー!)」

風邪「(向こうで男さんが騒いでいる気配が……。またウサギさんの耳が取れたのかしら……?)」









男「お待たせしました。……起き上がれますか?」

風邪「ええ……大丈夫です」

男「お粥も出来たんで一緒に持ってきました。良かったらどうぞ」

風邪「美味しそう……」

男「いやいや、きっと大したことない味ですよ。でも、早く良くなって欲しいって気持ちは込めてありますから」

風邪「きっと美味しいですよ。では……いただきます」


風邪「……」

男「ど、どうですか?」

風邪「……おいひいです……」

男「な、何で涙目なんですか?」

風邪「よく分からないんですけど……。でも、美味しいのは確かですよ」

男「そりゃ良かった。あの、俺も横で飯食っていいですか? 今ラーメン作ってるんで」

風邪「是非お願いします。男さんと食事をとれた方が元気になる気がしますから」

男「ありがとうございます。あ、そろそろ出来る頃なんで行ってきますね」

風邪「はい」

風邪「(何だろう。体はすごく辛いけど…………幸せ……)」









男「どうも~。ただいま戻りました」

風邪「いい匂いですね……」

男「あ、ラーメンの匂いで気持ち悪くなってしまったら言って下さいね。すぐに退却しますから」

風邪「大丈夫ですよ」

男「そうですか。それじゃ、いただきまーす」


ズルズル


風邪「……男さん、それは何の味ですか?」

男「え? ああ、醤油ラーメンですよ。本当は味噌派なんですけど、匂いがきついかな~って思って。何ラーメンがお好きですか?」

風邪「私……ラーメンはあまり食べた事がないんです(むしろ、全く食べた事がないんだけど……)」

男「へえ、珍しいですね。ラーメン嫌いですか?」

風邪「嫌い……ではないと思うんですけど、今まで食べる機会があまり無かったので」

男「そうですか。手軽なんで昼ご飯とかにお勧めしますよ。野菜炒めを乗せたら栄養も偏らないと思いますし」

風邪「今度……試してみますね」

男「そしたら感想聞かせて下さい」

風邪「はい」

風邪「ごちそうさまでした……。デザートのリンゴも美味しかったです」

男「いえいえ。あ、食器その辺によけといて下さい。これ食い終わったら一緒に片付けますから」

風邪「ありがとうございます」


ズルズル……


風邪「……」

男「あの……さっきからドンブリに視線を感じるような気がするんですけど……」

風邪「えっ! す、すいません気になって……」

男「もしかして……ラーメン食べたいんですか?」

風邪「……」


コクン

男「(真っ赤になって頷く様子が可愛い……!)」

男「じゃあ、一口食べてみますか」

風邪「……いいんですか? 男さんのご飯なのに……」

男「いやいや、たかが一口じゃないですか」

風邪「あ……」

男「(ん? 口を開けて待ってる……?)はい、どうぞー」

風邪「でもやっぱり……。え?」

男「(あ、あれ?)」

風邪「……」

パクッ……


男「……」


男「(もしかして俺、勘違いした……?)」
風邪「……」


モグモグ


男「す、すいません……」

風邪「?」

男「俺、口を開けて待ってるのかと勘違いして……。ただ喋ろうとしていただけだったんですよね」

風邪「……ありがとうございます」

男「へ?」

風邪「お粥も、ウサギさんのリンゴも醤油味のラーメンも全部美味しかったです。しかも、ラーメンは男さんに食べさせてもらって……すごく嬉しかった」

男「あ……はい」

風邪「だから、男さんが勘違いしてくれて良かったです。謝る必要なんて……ないんですよ」

男「は……はは……そうですか……。あの、俺食器片付けてきます!」

風邪「あ、すいません……」



男「(いやったああー!)」


風邪「(……? また向こうで男さんが騒いでいる気配が……。今度は何があったんだろう?)」

男「(おっと、いつまでも浮かれてないで落ち着かないとな)」

男「(それはそうと……、この後ってどうしたらいいんだ?)」

男「(熱があるから、今日は泊まっていってほしいんだけど……。俺の方から泊まっていって下さいって言ってもいいのか?)」

男「(男の部屋に泊まるのは怖いだろうし、何もしませんからって宣言してもかえって不安にさせるだけだろうしな……)」

男「う~ん……」

男「(さてさて、どうしたものか)ただいま戻りました~……あれ?」

風邪「……」

スヤスヤ


男「寝てる……?」


男「(よし、このままにしとこう)電気、消しますね……」


カチッ


風邪「……男さん……?」

男「あ、すいません起こしちゃいましたか?」

風邪「……」

男「(寝ぼけてる?)」

風邪「どちらに……行くんですか……?」

男「そうですねー……隣の部屋か、それが不安なら俺はネカフェにでも……」

風邪「ここにいて下さい……」

男「え?」

男「あの、同じ部屋に俺が寝ててもいいんですか?」

風邪「一人ぼっちは嫌……。側に居てほしいんです……」

男「わ、分かりました。じゃあ俺もこの部屋で寝させてもらいます」

風邪「絶対ですよ……。一人に……しないで……下さ……」

男「?」

風邪「……」


スヤスヤ……


男「(喋りながら寝る人を始めて見た……)」

男「側にいていいって言ってくれるなら、いつまでもいますよ……」

男「…………さ、まだ早いけど俺も寝るか。掛け布団は……と」







風邪「ん……」

風邪「(ここは……? そうだ、昨日あのまま男さんの部屋で寝てしまったんだ……!)」

風邪「(体が凄く楽になってる……)」

風邪「(今回体調を崩して辛い思いもしたけど、すごく嬉しい思い出も増えた……)」

風邪「(今まで私のせいで体調を崩してしまった人たちに残った思い出も、どうか辛いものだけではありませんように……)」




男「う~ん……、あれ……?」

風邪「(あ、男さんが起きた……。男さんには沢山お世話になったから、今度お礼をしないと。でも今はとりあえず、もう心配はいらない事を分かってもらう為に……)」


風邪「おはようございます」

風邪「(笑ってみよう)」










特別編
【風邪が体調を崩す話】完

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匿名読者
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