男「さっきの事を思い出して顔がにやけてしまう……。よし、今日はもう寝よう! 最高の気分のまま寝よう!」
男「…………」
男「寝れねー!」
男「駄目だ……あの手の温かさを思い出すと寝れない……。しかしまあ、これって贅沢な悩みだよな。とりあえず、俺落ち着け……」
ザアアアア……
男「…………(いつの間にか寝てたのか? 今は……2時半か。またえらく中途半端な時間だな。雨の音が……。朝までに止んでいるといいな)」
ザアアアア……
男「(明日もまだ降ってたら、彼女が困るだろうな……)」
男「(てか、俺いつまで彼女に助けてもらうつもりなんだよ……)」
男「(はあ……俺何でこんな事考えてるんだろう……。寝る前はあんなに浮かれていたのに)」
ザアアアア……
男「(でも、大事な問題だよな……。彼女が望んでいるとはいえ、大事な時間を奪っている訳だし……)」
男「……。あー! 何か頭の中がモヤモヤする! しっかりしろよ俺!」
男「(彼女に世話をやいてもらう申し訳なさからくるモヤモヤも、もちろんあるけどそれだけじゃないんだよな……)」
男「(きっと彼女といる時間が増えたからだろうな……)」
男「(最初会った時に思った『悪い人には見えない』が、そのうちに『絶対悪い人ではない』という確信に変わって、それからも彼女の色々な面を見て……)」
男「(あんなに一生懸命で優しい彼女に迷惑をかけ続けて良いわけないよなあ……)」
男「(でも、俺の体調が回復したらそこで終わりなんだな……)」
男「(いつも同じ時間に来てくれていたのが無くなるのか……)」
ザアアアア……
男「(ずっと体調が悪いままで居られたら……)……てか、いっそのこと治っても体調が悪いフリでも……」
男「…………!」
ガバッ
男「俺……今、何て言った……?」
男「(今の発言は最低すぎだろ、俺のアホ! 彼女に土下座しろ! そりゃ、あんなに可愛い子とずっと一緒に居たいと思うのは当然かもしれないけど、今のは本当に最低だ。反省しよう……)」
男「(嘘をついて彼女と一緒に居たとしても、それってずっと彼女が俺の体調を心配し続けなきゃいけないって事なんだよな。それは彼女が可哀想すぎる……。どうせなら、困ったり緊張してる顔より、笑顔でいてほしいもんな……)」
男「(はは、何だ今の。笑顔でいてほしいとか、どこのラブソングだよ)」
男「ん……?(ラブソング……? ちょっと待てよ。まさか俺のモヤモヤの残り半分って……)」
ザアアアア……
風邪「あら、雨。……少し冷え込みそうだけど、男さん大丈夫かしら」
風邪「……また私男さんの事考えてる。ちょっとは他の事も考えないと。……そう、美味しいご飯の事でも考えよう! 美味しいご飯……あったかーいキノコ雑炊でしょ、煮込みうどんに茶碗蒸し、カレーライス……。ううん、体調が悪い時に香辛料は良くないからカレーライスより煮込みうどんに……」
風邪「ええー!? やっぱり男さんの事を考えてる! しかも明日のお昼のメニューまで決まってしまったし……」
風邪「何がどうなっているのやら……。何かの呪いなのかな?」
風邪「はあ、呪いの専門家じゃないから分からないや……。とはいえ、本当に何かの呪いだったら男さんの看病に支障が出てしまうから、分からないなりにも考えなきゃ」
風邪「とにかく、何かにつけて男さんの事を考えてしまうのよね。男さんとの会話とかを思い出して嬉しくなったり、男さんが喜んでくれるかもって思ったら何だってできそうな気がしたり……」
風邪「…………あれ? これと同じような話を本とかで読んだ事があるような……」
風邪「あ」
男・風邪「これって……!」
男「どわああああ! ちょ、ちょっと待て俺!」
男「一生懸命看病してくれている彼女に対して何て感情を抱いてんだよ、この恥知らず! そして俺の馬鹿! もう明日は土下座して彼女を迎えろ!」
男「…………」
男「寝るぞー! もう寝るったら寝るぞ! 明日はどんな顔して彼女に会えばいいんだろな……。起きたらこの記憶が全部消えていればいいのに……」
風邪「…………え?」
風邪「ええええー!?」
風邪「どうしよう……顔が凄く熱いし、胸がバクバクいってる……」
風邪「…………」
風邪「とりあえず、もう夜中だし休まなきゃ……」
コテン
風邪「ううう~、まだ顔が熱い……。明日男さんに会うまでにおさまっているといいんだけど……。お面でも買って、顔を隠した方がいいのかな……?」
男・風邪「寝れない……」
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