サアアア……
上司「お~、やっぱり夕方になると涼しい風が吹くな」
タッタッ
男「こんばんはー」
上司「よう。久しぶりやな」
男「今日はお誘い有難うございます」
上司「あ~、堅苦しい挨拶は置いとき」
男「は、はい。あの、今日は花火を見ながら夕食だとか……」
上司「ああ、そうやで」
男「どこに行くんですか?」
上司「まあ、着いてのお楽しみってやつやな…………お、来た来た」
パタパタ
風邪「遅れてすいませーん」
男「ん……んん!? ゆっ……浴衣!?」
風邪「お待たせしました……」
上司「お前なあ、あんまり走ると転ぶで」
風邪「もう、転んだりしませんったら。男さん、こんばんは」
男「あ、こんばんは。今日は浴衣なんですね」
風邪「えっ? はい、今日は屋形船で花火を見ながら夕食だと聞いたので。そう……ですよね上司さん?」
上司「ああ、そうやな」
男「ええええ! 上司さん! 何で俺には教えてくれなかったんですか!?」
上司「え、いや何となく」
男「ううう、酷い……(前もって知っていれば、俺も浴衣着て来たのに……)」
上司「(おーおー、おもろいほど落ち込んどるな。いやあ~、やっぱりコイツもからかいがいがあるわ)」
男「お揃い……浴衣……」
風邪「男さん……? どうしたんですか?」
男「いえ、何でもないんです(ああ……その浴衣姿に癒やされる……)」
上司「男くんや」
男「は、はい!?」
上司「今日な、屋形船に男物の浴衣を用意しとるんや」
男「本当ですか!?」
風邪「(あっ……、足と履き物の間に石が入っちゃった……)」
ピタッ
上司「まあ、着せてやらんこともない。ただし、儂との飲み比べに勝ったらや」
男「ぐっ……! ま、負けませんよ」
風邪「(よし、取れた……。ああっ! 二人とあんなに距離が……)」
風邪「…………あ」
風邪「(夕焼けがすごくきれい……)」
泣きくらいに美しい景色の中に
大切で大切で仕方ない人たちが2人もいる
私は、その平凡な一瞬がすごく贅沢に思える
だってこんなにも幸せな事は他にはないから
風邪「幸せだなあ…………」
上司「うん? アイツがおらんぞ」
男「え……本当だ!」
上司「あ~、あんなに後ろにおるわ。おーい!」
男「あー! 走らないで! ゆっくりで大丈夫ですから!」
タタタッ……
風邪「はあっ……す、すいません」
男「いえいえ、俺たちこそ置いていってしまって」
上司「あんな所でポカーンとして何しとったんや」
男「あ! もしかして履き物が足に合わないとか……」
風邪「あ、違うんです。少し幸せにひたっていたんです」
男・上司「幸せ?」
風邪「はい。あのですね…………」
完
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