ガヤガヤ……
放送『本日は○○シーワールドにご来場頂き、誠にありがとうございます……』
ガヤガヤ
男「うわ~……(予想していたものの、すごい人だ)」
風邪「人が沢山ですね」
男「ですね……(いくらチケットがあったとはいえ、ちょっと選択ミスだったかな……)」
放送『小さいお子様からは目を離さないようにお願い致します……』
風邪「私も迷子になっちゃうかもしれないです」
男「大丈夫ですか?」
ギュッ
男「へ?」
風邪「なので……服の端を掴んでいてもいいですか?」
男「どうぞどうぞ!(○○シーワールド……最高!)」
風邪「クラゲコーナーはあっちですね」
男「そうみたいですね(目がキラキラしてる……)」
風邪「すごく楽しみで……あっ!」
スルッ
男「!?(ヤバ! はぐれた!)」
ガヤガヤ
男「(どこだ!? 暗くてよく分からない……!)」
風邪「男さ……ん」
男「!(声が…………こっちか!)すいません、ちょっと失礼します」
男「(あの後ろ姿……間違いない!)」
ガシッ!
風邪「男さん!?」
男「ふう、良かった」
風邪「はぐれたままもう会えないかと思いました……」
男「(声が震えてる……。よっぽど不安だったんだな)……怖い思いをさせてすいませんでした」
風邪「いえ、男さんは悪くないんです。私がしっかり掴んでいなかったから……」
男「…………あの……」
風邪「はい」
スッ
男「もし良かったら……どうぞ! 頼りない手ですが、絶対に離しませんから」
風邪「……」
きゅっ
男「!」
風邪「絶対……ですよ? 離さないで下さいね」
男「も、勿論!」
放送「本日は○○シーワールドにご来場頂き有難うございました。またのご来場をお待ちしております」
ガヤガヤ……
風邪「楽しかったー……」
男「かなりクラゲに夢中でしたね」
風邪「ええ。小さいのも大きいのも……すごく可愛いらしかったです」
男「もう出口ですけど、まだ見たいやつとかありますか?」
風邪「もう満足で……あっ!」
男「ははは、じゃあ戻りますか」
風邪「違うんです。手が、空いていた方の手が……!」
男「あれ? 少し煤みたいなのが付いてますね。……ぎゃ! 俺の手なんて真っ黒だ!」
風邪「あらら……。いつの間に汚れちゃったんでしょうね」
男「うーん、掴んだ柵がたまたま汚れていたのかな。とりあえず洗ってきましょうか。あそこにトイレありますし」
風邪「そうですね」
男「それじゃあ、またここに戻って来るという事で」
風邪「分かりました」
ゴシゴシ
男「ふい~、やっと落ちた」
男「えーと……流石にまだ戻ってきてはいないか」
男「……」
タッタッ
風邪「遅くなっちゃった……。えっと、男さん……」
男「ども」
風邪「あ! 男さん。すいません、混んでいたので遅くなってしまいました」
男「いやいや、ちょうどいいタイミングでしたよ」
風邪「そうですか?」
男「はい。……それじゃあ出ますか」
風邪「そうですね」
風邪「わあ~、もう結構暗いですね」
男「本当だ。帰りは水族館に近い駅から帰ろうと思うんですけど……あれ? 電車が……」
風邪「……走ってますね」
男「まさか……」
男「…………すいません、今のやつに乗れたらすぐ帰れたのに」
風邪「き、気にしないで下さい! 次の電車までたったの30分みたいですから。ベンチにでも座って休みましょう」
男「……そうですね」
風邪「……ふふ」
男「どうしたんですか?」
風邪「いえ、足が凄く疲れたのに……とても楽しい1日だったなと。誘ってくれて本当に有難うございました」
男「こちらこそ、一緒に水族館に行けて良かったです。あ、そうだ……。これ別れ際に渡そうかと思っていたんですけど……」
風邪「?」
男「はいどうぞ」
スッ
風邪「これは……?」
男「お弁当作ってもらったお礼とか、迷惑かけたお詫びとか……まあ、今日の思い出にって事で」
風邪「……あっ! 包み紙に水族館の名前が書いてある……。これ水族館で買ったんですか!?」
男「あ、はい」
風邪「いつの間に……?」
男「えーっと、お互いに手を洗いに行ってる時です。俺の方が早く戻ってきていたんで」
風邪「そうだったんですか。でも、私お返しするものが無いんです……」
男「うん? そ、そんなの気にしなくていいですってば~。俺が勝手に買っただけなんですから、気にしないで貰ってやって下さい」
風邪「本当に……いいんでしょうか?」
男「いいに決まってます」
風邪「じゃあ……有難うございます。今開けてもいいですか?」
男「どうぞどうぞ」
風邪「では……」
ペリペリ
風邪「あっ! これ、クラゲですよね……?」
男「はい、キーホルダーなんで良かったら何かに付けてやって下さい」
風邪「有難うございます! 嬉しい……。どこに付けようかな」
男「(う~、何か緊張してしまった)」
風邪「男さん男さん!」
男「あ、はい」
風邪「バックに付けてみました。本当に有難うございます」
男「おー、いいですね。こちらこそ、喜んでもらえて良かったです」
放送『次に一番乗り場に参ります電車は……』
男「え? もう30分過ぎた!?」
風邪「ね、あっという間だったでしょう?」
男「えええ……。信じられない」
風邪「私も、あっという間に過ぎたなあって思います。……その理由も分かりますけどね」
男「理由?」
風邪「ふふっ……。楽しい時間はすぐに過ぎてしまうって事ですよ」
男「……!?」
ガタン……プシュー
男「(何かめちゃくちゃ嬉しい……)」
風邪「男さん? 発車しちゃいますよ?」
男「うわっ! はいはーい(今日はいい1日だったな。いや……今日も、か)」
特別編
【男と風邪がデートする話】 完
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