【男と風邪が水族館に行く話】3 ★4
ガヤガヤ……

放送『本日は○○シーワールドにご来場頂き、誠にありがとうございます……』


ガヤガヤ


男「うわ~……(予想していたものの、すごい人だ)」

風邪「人が沢山ですね」

男「ですね……(いくらチケットがあったとはいえ、ちょっと選択ミスだったかな……)」


放送『小さいお子様からは目を離さないようにお願い致します……』


風邪「私も迷子になっちゃうかもしれないです」

男「大丈夫ですか?」


ギュッ


男「へ?」

風邪「なので……服の端を掴んでいてもいいですか?」

男「どうぞどうぞ!(○○シーワールド……最高!)」

風邪「クラゲコーナーはあっちですね」

男「そうみたいですね(目がキラキラしてる……)」

風邪「すごく楽しみで……あっ!」

スルッ

男「!?(ヤバ! はぐれた!)」

ガヤガヤ

男「(どこだ!? 暗くてよく分からない……!)」


風邪「男さ……ん」

男「!(声が…………こっちか!)すいません、ちょっと失礼します」

男「(あの後ろ姿……間違いない!)」

ガシッ!

風邪「男さん!?」

男「ふう、良かった」

風邪「はぐれたままもう会えないかと思いました……」

男「(声が震えてる……。よっぽど不安だったんだな)……怖い思いをさせてすいませんでした」

風邪「いえ、男さんは悪くないんです。私がしっかり掴んでいなかったから……」

男「…………あの……」

風邪「はい」

スッ

男「もし良かったら……どうぞ! 頼りない手ですが、絶対に離しませんから」

風邪「……」


きゅっ


男「!」

風邪「絶対……ですよ? 離さないで下さいね」

男「も、勿論!」









放送「本日は○○シーワールドにご来場頂き有難うございました。またのご来場をお待ちしております」


ガヤガヤ……


風邪「楽しかったー……」

男「かなりクラゲに夢中でしたね」

風邪「ええ。小さいのも大きいのも……すごく可愛いらしかったです」

男「もう出口ですけど、まだ見たいやつとかありますか?」

風邪「もう満足で……あっ!」

男「ははは、じゃあ戻りますか」

風邪「違うんです。手が、空いていた方の手が……!」

男「あれ? 少し煤みたいなのが付いてますね。……ぎゃ! 俺の手なんて真っ黒だ!」

風邪「あらら……。いつの間に汚れちゃったんでしょうね」

男「うーん、掴んだ柵がたまたま汚れていたのかな。とりあえず洗ってきましょうか。あそこにトイレありますし」

風邪「そうですね」

男「それじゃあ、またここに戻って来るという事で」

風邪「分かりました」

ゴシゴシ


男「ふい~、やっと落ちた」

男「えーと……流石にまだ戻ってきてはいないか」


男「……」

タッタッ


風邪「遅くなっちゃった……。えっと、男さん……」

男「ども」

風邪「あ! 男さん。すいません、混んでいたので遅くなってしまいました」

男「いやいや、ちょうどいいタイミングでしたよ」

風邪「そうですか?」

男「はい。……それじゃあ出ますか」

風邪「そうですね」








風邪「わあ~、もう結構暗いですね」

男「本当だ。帰りは水族館に近い駅から帰ろうと思うんですけど……あれ? 電車が……」

風邪「……走ってますね」

男「まさか……」







男「…………すいません、今のやつに乗れたらすぐ帰れたのに」

風邪「き、気にしないで下さい! 次の電車までたったの30分みたいですから。ベンチにでも座って休みましょう」

男「……そうですね」

風邪「……ふふ」

男「どうしたんですか?」

風邪「いえ、足が凄く疲れたのに……とても楽しい1日だったなと。誘ってくれて本当に有難うございました」

男「こちらこそ、一緒に水族館に行けて良かったです。あ、そうだ……。これ別れ際に渡そうかと思っていたんですけど……」

風邪「?」

男「はいどうぞ」


スッ


風邪「これは……?」

男「お弁当作ってもらったお礼とか、迷惑かけたお詫びとか……まあ、今日の思い出にって事で」

風邪「……あっ! 包み紙に水族館の名前が書いてある……。これ水族館で買ったんですか!?」
男「あ、はい」

風邪「いつの間に……?」

男「えーっと、お互いに手を洗いに行ってる時です。俺の方が早く戻ってきていたんで」

風邪「そうだったんですか。でも、私お返しするものが無いんです……」

男「うん? そ、そんなの気にしなくていいですってば~。俺が勝手に買っただけなんですから、気にしないで貰ってやって下さい」

風邪「本当に……いいんでしょうか?」

男「いいに決まってます」

風邪「じゃあ……有難うございます。今開けてもいいですか?」

男「どうぞどうぞ」

風邪「では……」

ペリペリ

風邪「あっ! これ、クラゲですよね……?」

男「はい、キーホルダーなんで良かったら何かに付けてやって下さい」

風邪「有難うございます! 嬉しい……。どこに付けようかな」

男「(う~、何か緊張してしまった)」

風邪「男さん男さん!」

男「あ、はい」

風邪「バックに付けてみました。本当に有難うございます」

男「おー、いいですね。こちらこそ、喜んでもらえて良かったです」


放送『次に一番乗り場に参ります電車は……』


男「え? もう30分過ぎた!?」

風邪「ね、あっという間だったでしょう?」

男「えええ……。信じられない」

風邪「私も、あっという間に過ぎたなあって思います。……その理由も分かりますけどね」

男「理由?」

風邪「ふふっ……。楽しい時間はすぐに過ぎてしまうって事ですよ」

男「……!?」


ガタン……プシュー


男「(何かめちゃくちゃ嬉しい……)」

風邪「男さん? 発車しちゃいますよ?」

男「うわっ! はいはーい(今日はいい1日だったな。いや……今日も、か)」










特別編
【男と風邪がデートする話】 完
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匿名読者
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