僕には何もない――
そう気付かされたのはいつだろう。高校で友達と馬鹿みたいに笑いながら、どこかその様子を自分の目線とは少し違った位置で眺めるようになった頃かー―
それとも中学生になった時に周りの楽しそうな笑い声が不快に感じられるようになった頃か
多分、どれも違う。もっと昔から、もっと大元から僕という存在はどうしようもないぐらい完結していた。末期に終わってしまったんだ。
産まれた瞬間から、この世に生を受けてしまった瞬間から、僕は狂っていた。
あくまで普通を装いながら、少しずつ少しずつ僕を形作る何かが――大切なモノが僕の中から音もなく抜け落ちてしまった。それでも今まで何とかそれを隠して生きてきた。
おかげで人気者とまではいかないがそれなりに、狭い範囲ではあるものの少なからずの交遊関係を持ってはいる。
疎ましくは思いつつも、仮面を付けていないと生きていけない。――それがこの17年を生きていての僕の教訓だった。
僕という形は『個性』と言うにはあまりにも歪だった。
それを無理矢理にでもキチンとした器に入れなければ世界に受け入れられない。
疎まれ、嫌われ、拒絶される。
ただ、両親には気付かれてしまったが――
中学生になるまでは自分の歪みに気付いていなかった。だからそれを当然と偽りもせずにいた。
そんな僕を、周りの人たちはただ、変わった子だと評価を下し――
産まれた時から僕という異形に触れていた両親はただただ恐怖したのだった。
そして、高校受験で僕が県外の進学校に合格したのを機に、両親は僕に一人暮らしをさせたのだった。
学費、家賃、生活費を定期的に振り込むだけの薄っぺらい関係にまで僕という存在を遠ざけた。
僕を駅に見送りに来たあの日、母は涙を浮かべ――父は僕を誇らしげに見つめていた。
ただ、僕には両親の気持ちが理解できた。涙を流しながらホッとしたような母の顔――腫れ物を見るような父の視線。
それに気付いていたが、特に何も感じなかった。むしろ感謝した。
悲しいという感情もなく、怒りという激情もなく、ただ、両親の真意に納得した。
特に何も感じない。両親のやったことは当たり前のことだ。だからこそ、気にならなかった。
その時から僕は自分の『歪み』を無理矢理に『普通』に抑え込む術を学んだ。
まるで拘束具に自らの体を包むように。それによって自分自身の狂気を更に加速させることを知覚しながら。
いつかその狂気を解き放つことが出来るその刹那まで、育むことを決めていた。
自己紹介が遅れたね。僕は西村 健斗(ニシムラ ケント)――イロノナイ世界を生きる狂人だ。
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