冷たい緊張の中、先に口を開いたのは相手だった。
「まったく、あなた、もう少し相手に対して気を使ったらどうなの?」
む、と私は首をかしげる。相手は相手、敵はなんであろうと倒すものなのが道理。我々の住む環境の中では、それが鉄則なのだ。
しかし、相手の言葉は何か意味深な感じがしている。
「理解してないようだけど、もう少し女性には気を使った方がいいと思うわ。」
む、と私は難しい表情を出す。
相手が女性……ふむ、私達の中では女性のほうが遥かに強く、こちらとて気が緩めないのだが……やはり、外の世界は女性が弱い立場なのだろう。今後、気を付けよう。
「しかし、そちらから問答無用に」
「あら、そちらから仕掛けたのではなくて?」
先ほどから妙に先読みされている感じがしている。ふむ、これはやはり気をつけたほうがいいな。
私は攻撃強化魔術を解き、再び全身を包む防御強化魔術に切り替える。
「あら、警戒しなくてもいいわよ、始める時は合図を送るわ。」
なんという正々堂々の勝負の申し込み。しかし油断はしない。防御強化は緩めない。
「それにしてもすごい蹴りね。とても女性に対する蹴りだとは思えないわ。」
相手は、ドコからともなく取り出した扇で口元を隠すと、静かに笑っているように見えた。
「妹紅、どうやら骨をやられたらしいわ、今、頼れる医者の下へ送ったわ。」
「?」
ふと、奇怪な話を持ちかける。妹紅?先ほど戦っていた者がすぐに移動できるとは思えない。
気になり、裏を振り返った。
「!?これは?」
先ほどまで、横たわっていた妹紅の姿が、見当たらなくなっている。どうやってあの傷のまま、移動したのだろうか。
「私が送ったのよ。」
再び視線を戻す。どうやら、目の前の敵はとんでもない術者だったらしい。
「まさか……貴様…『異次元の狭間』の持ち主?」
「……え?なにその異名。」
どうやら、彼女は『異次元の狭間』と同じ能力の持ち主らしい。
―――――――――
異次元の狭間――
それは、ある魔法界で起きた対戦が終わってすぐのことである。
人々は、苦しい生活の中、必死で生きようとしていた。
いくら対戦が終わった後とは言え、人並み栄える町はまだ、火薬のような匂いが充満していた。
そんなときだった。
ここに、とある悪魔が忍び寄っていた。
――連続殺人事件――
この事件は、再び対戦が行なわれ様としたきっかけにもなった重大な犯罪記録。
無差別殺人。
公共物破壊。
ついには一つの村をも消し去ってしまった。
しかし、このような犯罪をたった一月でやってしまう。一種のテロと同じだった。
しかも、このようなことを、たった一人でなしえているとは、誰も想像するものはいなかった。
かくして、その犯人は捕まったのだが、犯人は、自分に魔法をかけ、魔術も使えないほどに落ちてしまう。
記憶も自分で抹消し、自分が何をしたかさえ覚えていないという。
なんとしてでも、過去や事情を聞こうと、犯人を牢に閉じ込めておいた。
それが、間違いだったのだろう。
犯人は、自分の能力を使い、脱獄。そのまま逃がしてしまった。
牢に入れた者は、油断して魔法障壁のないただの牢にしれてしまったからである。
しかし、牢に入れたも者が悪いわけではなかったのだ。
犯人は自らの魔術を封印して、再び魔術を呼び戻したのだ。
調査員もよく調べたのだが、どうやら、その調査員にも魔術をかけていたらしい。
そうして、その国は、犯人の手によって滅ぼされてしまった。いとも簡単に。
そうして、その事件から、数百年たった今も、やつはのうのうと生き延びているのだ。
私も、過去2回戦ったが、相手が悪かったみたいだ。どうにも、相手は強すぎていた。
もう二度と負けないと誓い、日々精進を重ねている。
そして、今、それと同じ能力と思える女性の前に立っている。
果たして、私は自分の能力を存分に発揮できるのであろうか?
人が違うといえど、手は抜かない。彼女が犯人ではないとわかっていても、全力を出し、犯人に勝てる何かを掴みたい。
私は、彼女を見ながら、武者震いした。
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