森の奥深くにて3


強い殺気だ。傘を差しているほうからは怪しげな妖気。


そして白髪のほうは炎の気が溢れている。


どうやら、どちらも人並み外れた存在能力を持っているみたいだ。


早速、白髪の方は右手に火を灯し始めた。



「こんな夜中に騒がれちゃいい迷惑なんだ。だから……」


白髪の方が身を低く構えた。すぐにこちらに向かって飛び出してくるだろう。


見え見えの接近方法に戸惑うことなく、私は前方に向かって防御強化魔術を唱えながら、後ろに飛び下がることに。



「お引取り! 願おうか!!」


予想通り、相手は飛び出してきた。それも、先ほど右手に溜めていた炎を弾として放ちながら。


しかし速い。これはかなりのスピードだ。もう少しで詠唱が中断してしまう所だった。だが、先を読んでいた私は防御魔術を成功させていた。


とりあえず、これで敵の攻撃を防ぎ、様子を見ることが……



「…む。」


できなかった。敵は私が防御壁を作ったのを察知してか、直球ではなく、囲むように放ち、上下左右から、さらには後ろからも攻める気か。


なるほど、私の進行方向だと自ら当たりに行くようなものか。これだと無駄に障壁が削れてしまい、下手すると直に当たってしまうかもな。


しかし、私自身を囲んでいる防御魔法にはさすがに気付かなかったようだ、この程度の威力なら問題なくはじき返すことができるであろう。


が、私は何かに行く手を阻まれてしまった。


「―――っ、『柱』!?」


馬鹿な、こんなところに柱だと?森の奥深くにこのような石の柱があることじたい不可思議なはず。




そんな時、もう一方の微動だにしない敵から声が聞こえた気がした。


「………逃がしはしないわ。」


そして、私が気を取られている隙に飛び出してきた白髪の相手は、その白髪の長髪を揺らせながらこちらに猛スピードで迫っていた。


「くっ!!」


私は緊急防御壁を張ることに。しかしこれでは彼女の突進は止められないだろう。だが、それなりにダメージは軽減されるだろう。


しかし、相手が悪かった。



シュン……


―――パキィィン…。



私の緊急で作った防御壁でさえ、どこからともなく現れた青白いレーザーにあっさりと壊れてしまった。


いくら緊急で作ったとしても、並大抵の効力は発揮するのはずなのだが……





「無駄だわ。」



おそらく、最初に怪しげな妖気を出していたもう一人の相手の仕業だろう。これは一つやられた。



先ほどの白髪の敵が放った炎の弾を手で防ぎながらも食らうことに。


「そら、もう一丁だ!!」


そして、被弾している最中、迫ってきた彼女は、さらに左手で溜めていたと思われる力をこれでもかといわんばかりに私にぶつけてきた。


やむなく、私の行く手を阻んでいた柱も砕ける始末、私もこれには吐血物だった。


柱が立っていたと思われるところから、優に2~30メートルぐらい吹っ飛ばされてしまった。いやはや、ここまで私の身体を飛ばすとは。相当な力持ちなのだろう。


「……甘ぇよ。」


「!?」


受身を取りつつも転がっていた私が一先ず起きようとしていた時だった。


先ほどの突進のおかげで自身を纏っていた障壁も貫かれ、主に腹部は障壁が割れてなくなっていた。



それに、周りにもいくつか皹が入っているところもあるみたいだ。


そんな私の懐、つまりは一番障壁がなくて、攻撃有効範囲の場所からなにやらぽうっと明るい光りを放っていた。


「お前のその見えついた自信から察したよ。その障壁、壊させてもらった。」



裏を振り向きながら左手の炎を払う白髪の敵。


「じゃあな、散れ。」


「ぐっ!」


私はさすがに直の攻撃はまずいと感じたのか、すぐに避けようとしたが、どうやらこれは先ほどの「左手で溜めた」攻撃が時間差で効果が発動されるみたいだ。



と、考えている間もなく、私は腹部から猛烈な炎にあがけることもできずに、炎がそのまま全身を覆ってしまった。



――――――――――――



「ふん、たわいもない相手だったな。」


妹紅がポケットに手を入れながら帰ってきている。

先ほど、敵を殲滅し……たとは言えないか。


「まだ敵は完璧には死んでないみたいだけど?」


確かに、完璧には死んではいないが、さっきまであった魔力といえるものがなくなっている。


これは、相手の魔力がそこを尽きた、または存在自体がなくなったかのどちらかしかない。


先ほどまで戦っていた大男は、妹紅の炎に包まれて、魔力反応がなくなっていた。つまりは存在が消えたと思っていいだろう。


「ん、まぁ、そのうち燃え尽きるだろう。」


妹紅が手をひらひらと空を泳がせる。まったく、爪が甘いというか。



「ま、そうかもしれないわね。霊夢も無事みたいだし。」


私はひそかに、戦闘で意識を失っていた霊夢を永遠亭に送っていた。

あんな一撃で意識を失うなんて情けないと思ったけど、ここで野放しにしておくのもアレだったので、とりあえず医者の所に置いてきた。


そんな霊夢のいるところから、通信があった。単なるかすり傷ですんだらしい。


だけど、なんだってあの霊夢があんな一撃でやられたのだろうか。いくら不意を衝かれたとはいえ、あまりにもあっけがなさ過ぎる。


それとも、あの大男が?


そう彼のことを思い出したそのときだった。


あの火達磨のほうからとてつもない魔力反応が出てきた。


「―――!妹紅!」


「っ!?」


妹紅も急いで振り返る。


だけど、私達の目の前にいるのは、何も変なのない、さっきまでと同じ、火達磨でしかなかった。


まさか、新手?確かにそれはありえる。彼が仲間を呼んでいたのかもしれない。しかし、この幻想郷に入ってきた部外者の気配はまだ一人しか感じ取れていない。


その一人は、そう、まだ目の前で炎に包まれているさっき戦っていた男しかいない。



「ふむ、確かに先ほどの攻撃はなかなかいい手でした。」


そんな、火達磨状態の彼から声がしてきた。まさか、あの状態で無事とは。


爆発のように燃え上がった妹紅の攻撃、アレを耐えられると、こちらの倒せる方法がだんだんと狭くなっていってしまう。


要するに、あの男を倒す決め手が限られてしまうのだ。


とくに別段と焦る必要もないが、決め技がなくなると、少々プレッシャーがかかってしまうのは事実。


「……へ、死んでないのか。」


妹紅も、少々苦笑いを見せている。どうやら、確実に倒したと思っていたらしい。


「無論、油断などしていないが、いまから力を存分に出していく。気を緩めないように。」


また、あの火達磨から言葉が出てきた、相手は相当余裕なのだろう。敵である私達に注意を促してきた。


「行くぞ。」


ばっと炎からあの巨体が出てくると、猛スピードで、こちらに近づいてきた。



――――――――――



「行くぞ。」


私は身を構え、一気に飛び出した。


先ほどの、白髪の長髪並のスピードは出てないが、それなりに早く飛び出したつもりだ。


そういえば、傘を持つ敵から、「妹紅」と呼ばれていたな。覚えておこう。


まず、私は妹紅に攻撃を仕掛けることにする。


「!?」


妹紅は私のスピードに驚いてか、少々引き腰になっている。



「くっ!」


傘を持つ者から、再びレーザーのような攻撃が降り注ぐが、私は簡単に避ける。

なんだか、焦りが生じてか、攻撃がまばらになっている。



「そこだ。」



私は攻撃を仕掛ける。先ほどまで身の回りを守っていた魔力すべてを右手に移して、攻撃強化魔術を唱えた。


妹紅に近付こうとするものの、やはり、相手は火の弾で応戦してきた。


それも見事にかわすと、妹紅の懐の場所まで近付くことができた。



「っ!?」


身を低く構えた状態で、私は、防ぎに入ろうとした手を振り解くように、右手で払った。


妹紅は、私の力に適わず、防ごうとして力を溜めていた左手をはじかれると、無防備状態になっていた。


私はその隙を見逃さず、地に手を着けたまま、妹紅の腹部を蹴り飛ばした。


ドムっといやな音と共に、妹紅は飛んでいく。数分前の私と同じような吹っ飛び方だ。


蹴ったモーションを崩さず、私は何かをはじくように、人差し指ででこピンをした。



もちろん、これも抜かりのない私の攻撃法である。



先ほど飛ばしたのは、重力の魔法。妹紅の上にセットして、彼女が止まったと同時に、上から落ちるという仕組みだ。



「妹紅!?」


ふっ飛ばしてから重力の魔法まで一瞬だったので、傘を持ったほうは、状況がつかめていないようだ。



バン!


大地を手の平で叩くような音がする。これは、私の重力魔法が落ちたときの音。



どうやら、先ほどの彼女の元に降りたらしい。傘の方の敵を無視して、私はさらに追撃をしようと、飛ばされた妹紅の元へと飛び立つ。



私は追撃を緩めない、確実にしとめる。いままでそうやってきた。


妹紅のところに着くと、重力魔法で、地面が浅く球型にめり込んでいる。


その攻撃を食らった妹紅はもはや虫の息である。見るからにぐったりとしている。


しかし、止めを緩めない。私は、最後の一撃を加えようとスピードを緩めず、彼女に向かい続けた。



「だめよ。」



と、私は、急に動きを止めた。なにやら、目の前から妙な空間が漂ってきたのだ。

おそらく、またあの傘を持つ敵の仕業だろう。


私は制止して、傘を持つ敵を見つめる。


「……だめよ、まず私と戦いなさい。」



どうやら、いよいよ傘の敵と戦うことになるようだ。無論、両方とも手合わせるつもりだったが。



と言う以前になんで戦う羽目になったのだろうか。


苦しくも、私の戦いは続きそうだ。



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匿名読者
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