今日も生徒会室は平和だ。
何故なら俺は今、生徒会室に置かれていたオセロで遊んでいるからだ。
もちろん、生徒会室が平和なのは俺が一人遊んでいるって意味じゃない。
悪魔超人であるウォーズマンが居ない状態が、この生徒会室が平和である証拠な
のだ。
ま、言い換えれば仕事をしていない状態が平和と言える。
俺はオセロの…ええとなんだ?
白黒裏表になっている丸いアレを積み上げていく。
しかし…これが…なかなかバランスが難しい…。
これをミスったら…間違いなく崩れる!
そっと、そっと、慎重に…。
「こんにちは~」
「うおっ!?」
あ!
あ~あ…崩れた…。
…華奈江ちゃん…タイミング悪過ぎ…。
いや、吉本興業的にはおいしいタイミングなのか?
まぁ…ともかく片付けるか。
「あ、奥田先輩、三年の先輩の方が来てますよ」
え?なんだって?
「…へ?」
「だからですね、三年の先輩の方が来てるんですよ」
…お礼参り?
んなまさかな。
ここは極普通の学校だぜ?
そんな事を考えているうちに、開いた扉からその人物が姿を現わした。
「おいっす。久しぶりだな~淳」
「あ、こんちわっす榊会長」
なんだ。榊会長じゃないか。
「あの~奥田先輩…この方は誰なんですか?」
「ああ、華奈江ちゃんに直接の面識は無いか。榊会長、この子は一年の瀬尾華奈
江です」
「おう、よろしく」
「あ、よろしくお願いします…あれ?奥田先輩が会長で…榊先輩も会長で…あれ
?会長が二人も居るんですか?」
…榊会長、かなり笑いを堪えてるな。
会長、華奈江ちゃんは天然なんです。
勘弁してやってください。
「違うよ華奈江ちゃん。榊会長は先代の会長だよ」
「あれ?先代だったら…ん?んん?」
「く……まぁ落ち着きなって瀬尾。俺が会長だったから、淳が勝手に会長付けて
俺を呼んでるだけなんだよ」
「うーん……あ!はい!やっとわかりました!」
…だから榊会長、そんなに笑わんでやってください。
確かに華奈江ちゃんは面白いですけど…アレで本人、マジメにやってるんですか
らね。
「く…くく…そうかそうか。まぁ仕方ないわな。人間何事にもわからない事の方
が多い生物だからな」
「…はぁ~…良い言葉ですねぇ…」
「くくく…あ、ありがとう」
会長、すっかりツボったな。
…最近、計算型天然系は多いが…こういう華奈江ちゃんみたいなマジボケ系は珍
しいからなぁ…。
久しぶり、ないしは初めて見るタイプの人間だから楽しくてしょうがないんだろ
うな。
「で、榊会長。何か用っすか?」
「いや、特に何も」
ないんかい。
「強いて言うなら…遊びに来た」
「ではどうぞ」
俺は会長…先代会長にオセロを手渡す。
「お~サンキュ。…そういやあのバカップルはどうした?」
「…永田と堺っすか?あいらはまだ来てないっすよ」
「そうか…。あのバカップルは二人ともオセロが強いからな…負かしてやろうと
思ったんだが…」
…バカップルこと永田と堺は二人ともオセロが強い。
いや、むしろテーブルゲーム全般が強いと言った方がいい。
俺もオセロとか将棋とか…、あと遊戯王とかでも対戦したことがあるが…全敗だ
った。
ああ、人生ゲームだったら勝った事があるな。
「あの…奥田先輩…?」
「なんだ華奈江ちゃん?」
珍しい…華奈江ちゃんが本気顔で何かを尋ねて来るなんて…!
「永田先輩と…堺先輩は…その…付き合ってるんですか?」
「は?いやいや、そんなわけ…」
「付き合ってるぞ」
ちょ!?榊会長!?
んな事言ったら華奈江ちゃん信じるでしょうが!
「え!?やっぱり付き合ってたんですか!?」
「そうなんだよ。いつでもどこでも二人で一緒なのさ。だからバカップル」
「へぇ~…やっぱりそうだったんですか…」
やっぱりそうだったってどういう事だよ!
実は、薄々怪しいな~あの二人…とか思ってたのかよ!
「いつも二人で遊んでるし…いつも二人で仕事してるから…そうなのかな~…っ
て思ってたんですよ」
「そうそう。誰も口に出して言わないようにしていただけなんだよ!」
会長…あんたノリノリっすね…。
サンタを信じる子供にサンタなんて居ない、って言う大人より…たち悪いっすよ
…。
というか、そんなに永田と堺の悪い噂をたてたいんすか、あんた。
「わかりました!華奈江、永田先輩と堺先輩を応援します!」
…はい?
…耳掃除したのいつだっけ?
…今朝したな。
…聞き間違いじゃない?
「なん…だと…?」
…結構リアルにこのセリフ、出てくるもんなんだな。
会長、必死に笑いを堪えてないで助けてください。
半分は貴方の責任です。
「きっと、永田先輩と堺先輩なら…あのお二人なら性別なんて超えられます!」
…マジで言ってんの?
「…はい?」
「はい!あのお二人は大丈夫です!私が保証します!」
ここが銀行だったら貴女が保証人の時点でお金を借りられません。
…目がマジだな。
なんというか…止めてあげて。
俺はこのカオス空間の根源を睨む。
…榊会長…元は貴方の責任ですよ。
腹を抱えながら笑いを堪えても説得力無いですよ?
もう声あげて笑えばいいじゃん…。
「こうしてはいられません!まずは岡嶋先輩や森下先輩に教えないと!」
「待て待て待て!」
「大丈夫です奥田先輩!華奈江に全部任せてください!」
華奈江ちゃんは廊下へと走り出して行った!
「…人の話を聞けぇぇぇ!」
…時、既に遅し。
華奈江ちゃんの姿は俺の視界から消えてしまった。
…ごめん、永田…堺…。
俺はお前らに災厄が及ぶ事を防げなかった。
許してくれ。
ま、許してくれるよな。
あの二人なら。
…にしても、華奈江ちゃんのボケは最早あれだな。
公害レベルと言ってもいいのかもしんねぇ。
そろそろ冗談にならない程に被害が出始めたぞ?
…どうしようもない。
思考時間約一秒で結論が出ちまった。
正直、あのマジボケだけはどうしようもない。
本人に悪気があるならともかくとして、華奈江ちゃんのマジボケには悪気が無い
。
始末悪過ぎんだろ…。
「困ってるなぁ、淳」
この野郎、何ニヤニヤ笑ってやがる。
「…榊会長、俺知りませんからね」
「なんで?」
「俺、一応否定しましたから」
…ここで榊会長に否定が打ち消されたとか言わない。
この榊バ会長は屁理屈が異常な程うまい。
ヘタに反論させたら負ける。
「では、俺は帰りますんで」
「おいおい、マジか?オセロ、一人でしろってか?」
「俺、オセロ弱いので」
鞄を掴んだ俺は榊会長の言葉も聞かず、生徒会室の外へと飛び出す。
…はぁ。
最近、どうもろくな事がない。
…エロゲーみたいなよ?
ラッキースケベなイベントじゃなくて良いからさぁ…。
せめてもうちょい、良い目にあってもバチは当たらなくない?
はぁ~あ。
「虚しい」
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