「本当、迷惑な噂だよね」 by大河
今日も生徒会室は平和だ。

…平和過ぎて、暇だ。

「…仕方ない」

特にするべき仕事も無いので、PSPを取り出す。

…取り出して、やっぱり入れ直した。

何故か虚しい気分になる。

…うむ。

そうだ、図書室、行こう。

…これで図書室が平和じゃなかったら笑えるな。

廊下に出てみる。

辺りを見ても…生徒会のやつらは…居ないな。

ちらほら廊下に立ってんのは…吹奏楽部か。

あーそういや森下は吹奏楽部だったな。

…絶対似合わねぇ。

武闘派のくせに文化部かよ…。

…森下に見つからねぇようにしないとな…。

ま、図書室に向かうだけはさしたる問題もねぇだろうし…。

っと、図書室はここだな。

…挨拶は…いらねぇよな?

俺はスライド式のドアに手を伸ばす。

伸ばすと、ドアが勝手にスライドして開いた。

…ここは全自動か!

無駄な予算使い込み過ぎだろ!

「すいません、ちょっとのいて…あれ?奥田…?」
「んあ?」

…扉に目を奪われ過ぎた。

視線を戻しても誰もいな…いや、視界の下の方に黒髪が見えるな。

顔を少し下に向けて、と。

「おう、大河か。おひさ~」
「うん、久しぶり。元気してた?ま、してるよね」

そういや、二年になってから話する機会なんて無かったからなぁ。

なんか…本当に懐かしい顔だな。

「…久しぶり過ぎて、私の顔を忘れた?」
「……いんや。ちゃ~んと覚えとった」
「その間、ちょっと怪しいよ?」

…感慨に浸ってたんですー。

貴女が唐突過ぎるんですー。

悪いですか?

「相変わらず、やる気無さそうな顔してるね」
「うっせぇ」
「で、そこにいつまで立ってるの?」

…大河の言う通りだな。

こうして図書室の入口に立ってたら、他の人には邪魔で邪魔でしょうがないだろう。

「そうだな」
「………え?なんで動かないの?」
「いや…なんで動かねぇの?」

…動けよ。

…一瞬のアイコンタクト。

返事は…嫌、だそうだ。

「はいはい」

負けたのはもちろん俺です。

図書室の入口から離れる俺。

大河は図書室を出たかと思えばこっちに向き直ってきた。

「…もう少し、我を通すとかしないの?」
「人間、諦め時が肝心さ」

それが俺のモットーでもあるんでな。

…何故そこで溜め息を?

「そういう生き方、つまらなくない?」
「大きく飛ばなけりゃ、大きく落ちる必要も無いさ」
「…大きく飛ばないと、狭い世界しか見えないよ…」
「なら、高い山にでも登ればいいさ」

…何故そこで悲しそうな顔をする?

「…うん、ま…久しぶりに話せて良かったよ。じゃあね」
「じゃっす」

…あの顔は何だったんだ?

まぁいいか。

俺にわかる事でもねぇ。

図書室に入って、扉を閉めて、さぁ本を探そう!

「…おい」

ひ、ひぃ!

肩に手がぁ!

や、やめてぇ!

「やめてください!大声を出しますよ!」
「痴漢にあったみてぇな言い方すんな!テメェ男だろうが!」
「賢次、ここは図書室だぜ?…まぁ静かにしようや」
「誰のせいで怒鳴ってると思ってるんだ!」

…な~んか賢次がヒートアップしてんな。

興奮剤でも飲んだか?

「とりま、外出ようぜ賢次さんよぉ」
「望むところだ!」

…俺と喧嘩でもする気か?

やめてくれよ…んな事しても意味ねぇじゃんよ…。

折角図書室に入ったのに、結局出るハメになっちまった。

俺、本読んじゃいけねぇの?

「…なぁ淳」
「…なんだよ?」
「お前、マジで付き合って無いんだろ?」
「…熱でもあるのか?」
「ねぇよ!誤魔化すな!」

…話が…よめません。

え?誰が付き合ってるって?

俺が?まさか!

「結局…何?」
「…お前…さ、大河と付き合ってるんだろ?」
「……………」
「やっぱり噂は本当なんだな?」
「いやいやいやいや。はい?」

初耳です。

なんで俺と大河が付き合ってる話なんてあるの?

いやいや、冗談でしょ?

「…やっぱ、ただの噂なのか?」
「…お前な、俺みたいな性悪に彼女ができると思うか?」
「お前に彼女ができるくらいなら、世界中の人間がホストになれるわ!」
「だろ?」

…にしても、なんでそんな噂があんの?

「でだ。一体何事だ?」
「…お前…さ、大河についてもう一度よく考えてみろよ」

…大河について、ねぇ。

大河未来。

俺が一年の時に、同じクラスに転校してきた女子。

見た目は可愛いが、いかんせん暗い雰囲気、ってのが第一印象だ。

自分から話しかけるような事はしてなかった気がするな。

いつも教室の隅でビクビクしながら居る姿と、背が低い所から小動物みてぇな印象をもったのを覚えてる。

「うん、思い出したぞ」
「で、お前から見て大河をどう思う?」
「ま、可愛いんじゃね?」
「そういう事だよ」

………ん?

んー…あ、なるほどな。

「狙ってるヤツ、多いんだ」
「…やっと気付いたか。そういう訳でな、大河が唯一まともに話しをする男子はお前だけ」
「だから付き合ってんじゃないかって?くだらねー」

んな訳ないじゃん!

そんな旨い話なんてねーよ!

ただ話するだけで成立なんてよ!

現実とギャルゲーをごっちゃにしちゃいけねぇよ!

「…お前な、前科あるだろ?」
「………犯罪をした覚えは無いが…」
「意味が違う。大河と一緒に帰った事、何回かあるだろ?」
「ど、どうしてその事を!……とか言った方が良いか?」
「…イエスか、ノーか?」
「うん、ある」

別に恋愛云々の話じゃない。

たまたま共通の女友達が居て、なんとな~くノリでその二人と帰った。

んで、女友達が先に帰って行く際に、ちゃんと送って行ってやれという話になった。

という訳で、俺はそういった縁で大河と何回か一緒に帰ってる内に話をするようになった、っていうのが真実なのに…ねぇ?

「ま、気を付けろよ?お前の事を勘違いしてるのも多い」
「はぁ~。そんなに仲良くなりたけりゃ、話しかけりゃいいのに…なんとシャイボーイの多い事か」
「…お前みたいに神経図太くねぇんだよ。みんな」
「失礼な。図太い割には…繊細だぜ」
「んな事はどうでもいいんだ」

んまー失礼ざんす。

なんとキレイな否定だこと!

「これは友達としての…善意の忠告だぜ?」

…キザっぺーな。

聞いてるこっちが恥ずかしい。

「なんだ、お前は大河を狙ってたのか?」
「ちげーよ。前にも言ったが、長澤だよ」

んー、どうやら本当に賢次の善意らしい。

ここでつっぱねるのも悪いしな。

受け取れるものなら、受け取っとくか。

「ま、ありがとよ」
「そういうことだ。じゃな」

…うわ、想像以上に爽やかに帰って行きやがった。

今何時?

おえー、もうこんな時間かよ…。

図書室行っても探す時間ねぇし。

つかもう図書室閉まってる時間だし!

「…帰るか」

って…うわ…また生徒会室に鞄、置きっぱじゃんかよ…。
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匿名読者
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