「想像以上にウザい自慢だな」 by正治
今日も生徒会室は平和になるだろう。

俺は未だ終わりそうにない授業に退屈していた。

暇潰しに、机の隅に下手な絵を描いていく。

う~む…へのへのもへじなら上手く描けるのにな…。

やはり、手塚治虫先生は偉大だ。

手塚先生は元絵を見ずに記憶を頼りに絵を描く練習をしたと言うが…。

正直、無理だ。

…まだ終わらねーのか?

こういう時の授業時間は、だいぶ時間を潰したようで案外潰れていない。

まだ20分はある。

…秒にしたら1200秒か…。

うわっ長っ!

秒数はダメだな。

反対に時間を直したら…。

3分の1時間か…。

まだ…我慢できるか?

「おし、問い六に対する質問は無いな?次いくぞ次」

くそ…なんで教師って生き物はこんなに元気なんだ?

ああ…金貰ってるからか…なるほどな。

ま、教師としてもさ…こういう風に質問しない生徒が多い方が楽なの…

「せぇんせぇ~」

…前言撤回。

どうせ質問されるなら、頭の良い生徒にしてもらいたいもんだ。

「問いのぉ~いちに質問がぁありまぁす!」

うっわ…この独特過ぎて吐き気を催す声は…。

「……うわ、最悪。なんでよりよってアイツの声で起きんだ?」

隣の席で寝ていた正治が起きた。

…さすがにこれには同情する。

正治の言う通り、最悪の目覚めになるに違いない。

「…なぁ淳、なんでぶたこりんが質問なんかしてんだ?」
「…知らん。家畜は家畜なりに頑張ろうとしてんじゃねぇの?」
「…今、問い………七くらい…だな?今更問い一の質問してもしょうがなくね?」

…どうやら家畜が問いのとの字を発声した時点で起きたらしい。

まぁ正しい反応だろう。

普通の生命体なら、あの耳障り過ぎる声で命の危険を感じる。

「せぇんせぇ~無視すんなぁ~」

ぐっ…ああ…耳が…耳が腐る…!。

「あーあ…賢次が可哀相だよな…」

…正治の言葉につられて、俺は前の方の席に居る賢次の背中を眺める。

「だな。よりにもよって…あんな家畜と同じ名字とはな…」

…見た感じ、賢次を中心に男子の怒りが高まりつつある。

「せんせぇ~問いの一の質問に答えてくださぁ~い」

…付近の男子のみならず女子までイラつき始めているのにも気付かず、家畜が鳴く。

ああ、一応家畜っていうのは山下優子とかなんとかと名付けられている豚だ。

男子内での共通認識としては、猿からでは無く豚から進化したと考えられている。

「せんせぇ~」

とまぁ、見た目からして豚そのものであるくせに、ブリッ子(死語)ぶる。

この言葉遣いが、男子生徒に加えて、女子からの評判がすこぶる悪い原因だ。

「無視すんなぁ~!」

…おえっ…。

き、きもちわりぃ…。

「…まだ可愛い子が言えば…な」
「…ああ」

ブリッ子(死語)は実際居ればうっといが…ここまでのブサイクに言われるよりマシだろう。

「ああわかったわかった。わかったから後にせい」
「優子がぁ、今聞きたいから聞きたいの!」

………うぷ…。

もう…無理…限界…。

………。

……。

…。

「おい淳!チャイムだ!」

半ば途切れかけた意識の中に、正治の声が響く。

…本当だ!

…チャイムの音だ!

「嗚呼…これぞ、大いなる福音…」
「エアリスのレベル4リミット技だな」

さすが正治。

わかってくれている。

さて…と、後はホームルームだけか…。

…今日は早く家に帰って、イナズマイレブンの録画分を見ようかな…。

あー…学校が終わるだけでこんなに楽しいなんて…。

おっと…やっと先公が来たな。

さぁて、早く終わらせてくれ!

「はい!今日は席替えをします!」

…え?

席…替え…だって?

「…なん…だと?」
「超・展・開だな」

俺の呟きに正治が合わせる。

いやいや、席なんて変えんなって。

「みんなの不満があってはいけないので、席は私が決めておきました!」

むしろそっちの方が不満たらたらだよ!

「はいはい静かにする!では、新しい席順表を張り出すので席を変えた人から帰ってください!」

あの笑顔…激しくウザいわ…。

…死ね。

「…見に行かないのか、正治?」
「人むっちゃ多いねん」

…同感だな。

………ん?何故に大阪弁だったんだ?

まぁ、いいや。

さて、辺りを見ればと…。

おやおや、賢次も同じ待ちの姿勢か。

…チッ…視界の隅で、脂肪の塊が跳ね回っているのがうっとうしい。

あの横幅じゃ嫌でも視界に入ってくる。

…おお…あれはすげぇな!

家畜の周り約半径1mには誰も人が近付いていないぞ!

逆カリスマ…それとも逆手塚ゾーンと言うべきか…。

「そろそろかなっと…」
「…あん?」
「ほら、淳も見に行こうや」
「お…おう」

正治に促されて席を立つ。

軽く伸び。

…正治移動力あるなぁ~。

もう賢次誘ってるや。

…二人仲良くケーキの入刀!…では無く席順表の前に行って…。

あれ?

二人固まってんぞ。

「おいおいどうしたテメェら?鳩に豆鉄砲くらわされちゃったみたいな顔…して………あ?」

…は…?

目をこする。

…は…?

もう一度目をこする。

………なん…だと…?

「…なぁ…今言ってみたい事があるんだが…」

賢次と正治が、目で言ってみろと言う。

ならばと俺は息を大きく吸って叫ぶ!

「嘘だ!」
「それを言いたいのは俺だ!」
「賢次!落ち着け!」

……周りから…哀れみではなく同情の視線…。

そりゃそうだわな。

だって…よりよって…俺たち三人…家畜に一番近い男子じゃんよ!

…席自体は悪く無いんだ!

後ろから二列目の窓側。

賢次が一番窓際で次に俺、その隣は正治だ。

でもよ…でもよ…賢次の後ろはあの家畜だぜ!?

おいポンコツ教師!

テメェは賢次に家畜を殴らせてぇのかよ!

「うわぁ~やだなぁ~あんなやつらの後ろなんてぇ~。ねぇ紗恵ちゃん?」
「…………(コクリ)」

…家畜の腹立つ声が聞こえたが…あれ?

俺の後ろは…沖川さんかよ!

……別に悪く無いな、うん。

基本…無害…無害過ぎて何ごとにも…、特に男子関連にはノータッチな人だけど。

「終わった…俺の高校二年生…」
「賢次!どうした!賢次!」
「え、衛生兵!衛生兵!パラメデイッーク!」
「すまないな…正治…淳…俺…燃え尽きたぜ…真っ白にな…」
「立て…立つんだ…」
「立つんだ賢次ぃぃぃぃぃ!」

賢次…死す…。

賢次…お前の誇りある死を…決して忘れないよ…。

「正治、賢次は死んだ…亡骸は…」
「ああ、賢次の好きだった…あの場所に埋めてやろう…」
「ああ…アニメイトの地下にでも…」
「…そんな恥ずかしい所に埋められてたまるか!」

賢次が甦った!

「あーあ…さっさと荷物まとめて帰ろうぜ…」

明らかに萎えまくってんな…。

その境遇には同情するよ…賢次…。

「同情するなら席変えろ!」
「拒否」
「同じく」

それとこれとは話は別だ。

さ、席に荷物を置いて…と。

「まぁ、よろしく願います」
「……(コクリ)」

後ろの席の沖川さんに挨拶をしておく。

一応近所付き合いは必要だしな。

「おいデブ!テメェ俺に迷惑かけたらブッ殺すからな!」

…賢次のように必要無い場合もあるが。

「淳~、賢次~、帰ろやー。ポーション売り切れちまうよ」

正治が俺たちを呼ぶ。

致し方ない。

賢次を引き摺る俺。

「わかったな!テメェいい加減にしねぇと屠殺場で解体すんぞ!」

…想像以上にキレてるな…。

まず先に落ち着ける方法を考えるのが、得策かもしれねぇ…。
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匿名読者
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