「彼女もバスケ部員です」 by堺
今日も生徒会室は平和だろう。

俺は生徒会室のドアを開く。

「うぃーす」
「永田!これでチェックメイトだ!」
「まだだ!たかがビショップがやられただけだ!」
「あ、こんにちは~奥田会長~」
「よぉ淳!」

…珍しいな。

生徒会役員が全員集合とは!

「ほへぇ~生徒会役員が揃うのってなんか久々だな」
「会長、岡嶋先輩忘れてますよ」

華奈江ちゃん、俺にとってウォーズマンは存在しないの。

まぁいつもの生徒会室だな。

永田と堺の挨拶。

華奈江ちゃんの間の抜けた声。

森下の男みてぇな口遣い。

…これで仕事がなけりゃ楽しいんだけどなぁ…。

「あ、そうだ淳。なんか意見三枚くらい来てたよ?」
「それでどうしたっていうんだ森下?」
「机の上に置いといたよ?」
「ああ、そう」
「うん?」

…これで意見を処理してくれてたら、俺は嬉しいんだがな…。

なんだかなぁ…。

なんで意見投書箱なんてのが設置されてんのかね?

うちの学校には…。

ああ、意見投書箱ってのは目安箱みたいな物で…。

生徒が自由に意見を投書して、その意見を受けた生徒会が学校を変えようと動くシステムなんだが…。

実際は変える気あんのか?みたいなカオスな意見が多い。

ちなみに、先代までの未処理の案件は大抵このカオスな意見についてだ。

「さて…と一枚目は…」

三枚の中で一番下の紙!

君に決めた!

「…なになに……先生…バスケがしたいです…」
「スラムダンク?」

さすがバスケ部。

堺が敏感に反応した!

「堺!余所見をするな!いけポーン!蹴散らせ!」
「う、うわぁぁぁぁぁ!」

…堺に悪い事したな…。

と、いうよりポーンでどれだけ蹴散らせるんだ?

「淳!次行こう!次!」
「お、おう…」

…なんで森下にリードされなきゃならないんだ…?

………二枚のうち上か下か…。

上だな。

「……は?」
「…どったの?」
「…お前にはやらせてやんねー!クソして寝ろ!」
「喧嘩バスケ戦士を探さないと!」
「堺!隙だらけだ!行け!クイーン!チェックメイトだ!」
「う、うさぁぁぁぁ!」

…うさ?

…まぁ、いいか…うん。

…てかさ、遊んでんのか…この二つの意見?は…。

いや、差出人違うな…。

…にしてもこの絵うまいな…。

安西先生みたいな外道監督なのか、外道監督みたいな安西先生なのかわからない…。

……俺の机の中に収納だな。

「淳!次が最後だぞ!」
「………」

うっわ…森下が気味の悪い笑み浮かべてやがる…。

ぜってぇ何かあるなこりゃあ…。

仕方ねぇ…覚悟を決めて最後の一枚!

うりゃあっ!

「………なっ!?」
「どしたのどしたの~?」
「どうしたんですか~会長?」

ち、チクショウ…華奈江ちゃんまで森下に見える…。

「ほらほら、読み上げないと!みんな知りたがってるよ~」
「そうですよ会長!」

なんと見事なマッチポンプ!

…華奈江ちゃん…絶対意味分からずに同意したな…。

…いいのか、コレ?

「………じょ、女子の体操着は…ぶ、ブルマが良いと思います」

………。

うん、空気が固まったな。

話題を変えよう。

差出人は…誰だ?

「…差出人は…女子の御御足を見隊、足フェチの会、その他数グループからの投書だな」

…だから空気固まったままだっちゅうに!

くっそ…あの森下のしてやった顔が激しくうぜぇ!

「会長!」

………。

…華奈江ちゃん…頼むから女性から話題を振るのやめて…。

俺が今一番痛い子だからさ…。

「確か歴代の未処理の案件のほとんどがそんな投書だったと思います!」
「……はい?」

んな馬鹿な…。

幾ら何でもそれはねー…あった。

よくよく見れば…半分くらいが女子の体操着変更の願いだな。

直接的に書く漢も居れば遠回しに書く策士も居るな…。

「で、どうしますか会長!」
「は…?」

俺は森下を睨む。

うっわ~あのイヤらしい笑み!

ぜってぇ華奈江ちゃんに何か仕込んだな?

「会長!ちゃんと話を聞いてますか!」
「うぉう…おう…」

ヤバいな…今日の華奈江ちゃんはやけに迫力がある…。

あの野郎…後で覚えてやがれ…。

「で、会長。この投書はどう処理するんですか?」

…どうって…そりゃ偉大なる先輩方に従うのが得策でしょう。

「できれば…見なかった事に…」
「そんな弱気な事で良いんですか!」

そんなに机を叩かなくても良いじゃないですか!

「会長は…会長は…そんな弱い方じゃありません!」

…うっおい!

これは金八先生か?

何かのドラマの撮影か?

おい森下!テメェは何吹き込んでやがんだ!

ええい!

何とかして誤魔化すんだ俺!

「いや…でもさ…嫌でしょ?体育でさ、その…さ…履いて授業するなんて…」
「何を言ってるんですか会長!私、体育の授業毎回ブルマを履いて出ていますから!」

…こういう時はどんな擬音を使うんだったっけ?

ああそうだ…アレだ。

ポカーンだ。

いやいや、今それカミングアウトする所じゃないでしょ?

てか…さ、今の御時世でそんな恰好で体育してたら、うちの学年でも話題になるから。

…むしろテレビで話題になるから。

悪い意味でだけど…。

「会長…さては信じていませんね…?」
「お、おう」

さすがにねー。

「証拠を見たら納得しますか?」
「あ…いや…信じるからやめ…」
「わかりました、見せてあげます!」

人の人の人の話を聞け!

「ちゃんと見ていてくださいよ!」

…いやだからってさ、別に生徒会室で着替えなくても更衣室でさ…。

とかなんとかしてるうちに、華奈江ちゃんはスカートの裾に手を掛けて…。

…ん?裾?

………あ、そういうことか。

「止めろ森下ッ!!」

俺は身を乗り出し腕を掴む。

森下は後ろから華奈江ちゃんのスカートを押さえる。

これでスカートを捲る事はできまい。

「は、離してください!会長に!会長に証拠を見せる事ができません!」
「やめい!俺が何か勘違いされるような事を言うな!」
「離してください!奥田先輩!森下先輩!」
「やめてあげて!」
「HA☆NA☆SE」

くそ~あのコンビは…完璧に他人事だと楽しんでやがる…。

「でもさぁ淳。ここまで華奈江ちゃんが言うなら見てあげた方が…」
「元凶がなにほざいてやがる!」

この…森下め…ふざけるなよ…。

ああそうだよ!

見れるもんなら見てみたいさ!

でもな、どうせ見たら見たで…変態扱いしてくるに決まってる。

「なぁ淳。ここはおとなしく見ようや」
「堺の言う通りだって、な?」

このゴールデンコンビが…。

テメェらは哲也とダンチかよ!?

ええい!肩に手を回すな二人とも!

「おいおい~見ちまえよ~?」
「楽になるぜ?」

チッ…お前ら二人がそう来るなら俺にもいよいよ、考えがある。

いくぜ…改心の一撃を食らえ!

「ま、お前らは彼女さんにそんなカッコ、してもらえるもんな」

…さぁ、どうなる!

「………」

森下選手ジト目だ!

二人に対してドン引きしております!

「………」

華奈江選手はあまりの展開に呆然としているー!

「………」

おっと堺選手は俯いたまま震えております!

「………」

対する永田選手も、俯いたまま震えております!

…なんかそっくり過ぎてキモいな…。

あれ?むしろ俺、さっきよりピンチか?

途端、二人が同時に立ち上がった。

「俺は…俺はちゃんとした健全なお付き合いだい!」

堺が涙を流しながら走り去る。

「なんで…なんで二人だけの秘密を知ってるんだよ!」

永田も、涙を流しながら走り去る。

ていうか永田…そんなマニアックな…って二人とも鞄を持って帰りやがった!

よし、じゃあ俺も!

「華奈江ちゃん、後は任せた!」
「……え、ええっ!?」

華奈江ちゃんの手に強引に投書を握らせる。

「アバヨォッ!」

流れるような一連の動作で鞄を回収した俺は、挨拶もそこそこに生徒会室を飛び出す。

飛ぶが如く!

さぁ靴箱に行って…っとほわぁぁぁ!

死角から誰か飛び出して来たぁ!

「………」

ここで沖川さんかよ!

「………」

避けるか、避けるか?

「………」

避けないぃぃぃ!

ていうかこちらを見向きもしないぃぃぃ!

では俺が避けるしかって…あ!

「うどぅっは!」

…結果、盛大にコケました。

いてぇ…数ヵ所打撲した…。

おっと、コケた俺の横を…沖川さんが…沖川さんが…。

「………」

そのまま通り過ぎたぁぁぁ!

…俺、そこまで嫌われてたんすか…。

…もう…あれだな…。

あの超絶的なスルースキルには勝てる気がしないな!

………。

はぁ…自分で言ってて虚しくなった。

帰ろう…。

最初の勢いはどこへやら。

痛む我が身を引き摺る俺…。

せつねぇ…。

やっと見えたわ…靴箱…。

「……開けぇ!」

掛け声と共に靴箱の扉を開けると、一枚の紙。

「…なんだぁ?」

どうやらメモ用紙らしい。

紙の表面には小さな文字で一言だけ、何か書かれている。

「…ありがとう、か」

…礼を言われる心当たりがない。

俺今日礼を言われるような事をしたかな?

…うん、してない。

…じゃあ誰だ?

堺か永田のイタズラか?

いや、この丸っぽい字は女子っぽいし。

幾らアイツらでもなぁ…もうちょい手の込んだ事をするよな。

例えばさ、告白の文書を偽造して呼び出すとかさ。

まぁ…いいや。

俺はメモ用紙をポケットに入れる。

夕暮れにはまだ早いが…。

「カラスが鳴ったら帰りましょ…っと」
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匿名読者
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