「誰だって書き忘れちゃいますよ」 by瀬尾
今日も生徒会室は平和だ。

「………」
「来い!来い!」

さぁ来い!

早く突き刺してやりたいんだ!

あの穴に!

「………」
「来た!水色の長い棒!」
「なぁ…何やってんだお前?」
「携帯でテトリス」

あっ!

今ので一列分ずれた!

あっ…待って待って待て待て!

…ああ…燃えた…燃え尽きたぜ…真っ白にな…。

俺は携帯のアプリを終了させて部屋を見渡す。

…あれ?

「おい賢次。ここは生徒会室だ。卓球部の部室とは違うぞ」
「…部室と生徒会室を間違える馬鹿は居るか?」
「居る」

即答できるとはさすが俺!

おっと、賢次もさすがだな。

なんとも嫌そうな顔をしているじゃないか!

「一応聞いとくが…誰だ?」
「お前」

俺の人差し指の先で、賢次が大きく溜め息を吐いた。

さすがに心配だな。

「どうした?借金取りに追われてるのか?大変だな」
「…ちげーよ。ふざけんなよ…」

…どうやらマジな話みたいだな。

「…なんかあったのか?」
「…なんかあったのかじゃねぇ!卓球部の部費が減らされるって事はどういう事だ!」
「…減らされる?」
「そうだよ!去年の一割くらいにしかならない程減らすってどういう事だ!」

…妙だな。

今年の卓球部の部費は、去年より若干の増加だった筈…。

はて?どこで間違えたかな?

資料はと…。

…卓球部は去年は九万円で…今年は九万五千円じゃなかったけか?

…んー卓球部はそれなり部員は居るし…そこそこ強いから…。

「…なんで部費が減るんだ?」
「おめぇが知らなきゃ誰もわからねーよ!」

もっともだな…うーん。

「本当に勘弁してくれよ…9500円じゃ何にもできねぇよ…」

ん…9500円…?

「なぁ、9500円か?」
「ん…ああ。9500円が今年の部費だった」
「九千五百円じゃなくて?」
「いや、9500円」

…あーなんか最悪のシナリオが読めた気がする…。

後は確証を見つけるだけだな。

誰か扉を開けて…来たな。

「こんにちは…って会長!勝手に部外者入れちゃいけませんよ!」
「…相変わらずうるせーなウォーズマン副会長は…」
「だろ?」
「聞こえてますよ二人とも!」
「…聞こえるように話してんだよタコ!」
「…さっさと席座って仕事しろやドカスが!」

う~ん、やっぱり賢次と組むと悪口も加速するなぁ~。

理不尽さ二倍、タチの悪さ二倍でございます!

…っと、憎むべきウォーズマンに気を取られてたぜ…。

「おいウォーズマン!」
「………」
「おい!ウォーズマン!!」
「会長、ウォーズマンって誰ですか?」

チッ、ウザってぇな。

確か未処理の案件が結構溜まってたな…。

そうそうここだ。

「ほい」
「なんですか会長…これらは…?」
「何って…今まで何代にも渡って溜まってきた未処理の案件に決まってるじゃないか」
「じゃあ何故私に渡すのですか?」

わかりきった質問をこのウォーズマンは…。

俺は溜め息を吐きながら答えてやる。

はあ。

「いつもいつも俺に仕事しろとかほざきやがるくせに、仕事をしようとしないテメェへのプレゼントだ」
「…は?会長が今まで仕事してきましたか?」

ウゼぇ…。

「俺の仕事は役員共に仕事をさせる事に決まってんだろハゲ」
「私、ちゃんと髪ありますから」
「はぁ?テメェは心の中が不毛地帯だろうが。話題そらすな」
「じゃあ今までしてきた仕事、言ってみてください」

うっわ…なんだぁ?

このしたり顔ってか言ってやった顔は…?

ていうかよぉ。

このままだとキレるよ?

「いや、キレる前に早く答えろって!」
「嫌です」
「いいから早く!」
「はいはい」

あ…あーもうダメだ…。

キレる。

絶対キレる。

俺は…知らねぇぞ?

「………いい加減…答えろや!ぶっ殺すぞ!」
「賢次ぃ~、物は壊すなよ~後で請求だからなぁ~」

あーあ、賢次キレちゃった。

まぁ大丈夫だろ。

いきなり殴りかかってないから…頭の中は冷静だろうな。

「な、なんですか!さっきから貴方は!」
「はぁ!?俺は部費について疑問があったから淳に聞いてたんだ!それが部外者だぁ?ふざけんな!」

賢次が机を蹴り飛ばした…ってあぶねぇ!

こっち蹴ってくるんじゃねぇ!

無言の抗議を賢次に送る。

「………」

無言の謝罪が賢次から送られてくる。

よし、許す!

さぁどんどん続けてくれ!

「どうなんだオラァ!答えるのか!答えねぇのか!どっちだ!」
「…すいません…ちゃんとお答えします…」

チッ…もう終わりやがった。

ウォーズマンみたいなクソ真面目タイプは自分の非を正攻法で攻められると弱いからな…。

「…会長、何でしょうか?」

うーわーウォーズマンがやけにしおらしい!

気もちわりぃ!

「あー…卓球部予算の通知書を書いたの、誰だったっけかな?」
「華奈…瀬尾さんです…」

うっわ…最悪のシナリオ的中したじゃんかよ!

マジかよ!

「…賢次、説明すっからとりま外出ようぜ」
「…は?なんで?」

わかんねーのか?

俺はウォーズマンを指差しながら口だけを動かす。

ウォーズマンは椅子に座ったまま、何も無い空間の一点を見つめている。

ありゃ泣くパターンだな…。

賢次と無言で頷き合い生徒会室を出る。

ああ、鞄…鞄…また忘れたらタマンネー。

~っと、アイツもう靴箱に向かってやがる。

「で、なんだって?」
「せっかちだな~。モテないぜ?」
「お前よりはモテるわ」

う~ん…反論できねぇ…。

まぁ…まずは靴履いて…と。

「…結局何なんだ?」
「すまん。うちの後輩のミス」
「あ~っと、せお?だったか?」
「そそ。瀬尾って子」
「で?」
「多分、0を一つ書き忘れたんだろ」
「…………はぁ?」
「あの子天然だからいつかやるとは思ってたんだけどなぁ…」
「ああ…だから9500か九千五百か確認したのか」
「そゆこと」

気付いてみたら、なんかすげぇ疲れる理由だな。

最近…やけに華奈江ちゃんに振り回されてる気がするわ…。

「…ふぅ…後輩の教育はしっかりとな」
「すまんな。うちのが迷惑かけて」

賢次はやけに疲れた顔をしている。

俺もやけに疲れたぜ。

「ま、許してやるからジュース一本な」
「おう、いいぜ。後でちゃ~んと、華奈江ちゃんに請求すっから」

賢次と笑いあう。

さぁ、帰ろうか。

「…でもなぁ…賢次」
「…なんだよ?」
「やっぱり野郎二人で帰るって…虚しいよな」
「…それは言わない約束だ…」
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