俺の部屋はトイレから数歩と歩かない距離にある。
さっさとトイレで用を足し、早く寝ようと考えていた。
しかし、用を足している途中に背後に人の気配を感じる。俺は怖くて後ろを向くことなんかできなかった。
用を終えると同時に階段から誰かが駆け上がって来る音が聞こえる。
ここは二階で部屋は三つあり、一つは俺、もう一つは兄、最後の一つは両親の部屋だった。
下の階には誰も居るはずがなく、いつも明かりは消えていた。
駆け上がってくる音は止まず、足音をドカドカとうるさく鳴らして、音が俺の隣りまでやってくると…ふっ、とその音は途絶えた。
俺はいつものように気味が悪くなり、急いで寝室へと駆け込んで部屋の鍵を閉めた。
極度の恐怖を感じたせいか、部屋の中に戻ってくると急に足の力が抜け、なんの抵抗もなく床にへなへなと座り込んだ。
動かない足を引き摺って寝床に戻ろうとすると、背後で一部始終を見ていた、長身の女が体を動かさず目だけをぎょろぎょろさせてこちらを見ていた。
その女の腰まで続いている黒くてさらさらしてそうな髪は顔を隠すように生えていて、余計に不気味さを醸し出していた。
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